血液備蓄所の再構築を

血液備蓄所の島内再構築の必要性が強調された2023年度奄美大島地区緊急時供血者登録制度連絡協議会

緊急時供血 生血使用のリスクも 登録者539人、掘り起こし課題
登録制度連絡協

 奄美大島地区緊急時供血者登録制度連絡協議会(会長・相星壮吾名瀬保健所所長)の2023年度協議会が22日、県大島支庁会議室であった。同制度は緊急時に島内の医療機関で採血を行うもの。今年4月1日現在539人(うちRHマイナス登録者数は40人)が登録、22年度は延べ6人が制度を利用したが、制度について「緊急避難的な制度であり、生血使用のリスクがある」として、供血に頼らなくても済むよう島内に血液備蓄所の再構築を求める意見が出た。

 連絡協は献血活動に協力している奄美大島ライオンズクラブなどの民間団体、医療、消防・警察、県・地元市町村で構成。緊急時供血者登録制度は、島内で保有している保存血液に不足が生じ、県赤十字血液センターが製造した献血による血液を確保することが困難となった場合、輸血治療が必要となった患者の救命のため、協力できる供血者から、院内採血を行うことで必要な血液を迅速に確保することを目的にしている。

 県薬務課、県赤十字血液センターが献血状況や血液製剤の供給などについて説明。それによると名瀬保健所管内では年2回(10月と2月)、献血バスによる献血が実施されているが、18年度961人だった献血者数は19年度1123人と千人を超え年々増加、22年度には1282人となった。献血は製品化(製剤)され医療機関に供給されており、奄美大島での製剤別供給本数(1単位換算)は22年度5330単位に。前年度(5974単位)より微減で、赤血球・血漿は増加しているものの、血小板が減少している。県内における離島への供給比率は4・6%だが、離島のうち奄美大島への割合が49・7%とほぼ半分を占めている。

 献血などで採取された血液を感染症などの製品検査を経て輸血用として供給される製剤に対し、医師の責任の下で院内採血される緊急時供血は生血のため感染症の有無が検査されていないなどのリスクを抱える。登録基準として▽過去3年以内に移動採血車等で「県赤十字血液センターの献血」をしたことがある▽救急時の供血に協力可能▽日赤血液センターの献血基準を満たしている―があり、登録者の血液型別ではABが40人(うちRHマイナス2人)と非常に少ない状況にある。また、登録者数のうち22年度の新規登録者数は205人で、全体の4割近くを占める。

 協議では制度登録者を増やすため、市町村で供血者を掘り起こす取り組みが課題として挙がった一方、同制度は「あくまでも緊急避難的な方法でリスクを抱える」ことから、県立大島病院が血液備蓄所の島内再構築を「日赤の責務として取り組むべき」と注文。18年度まであった備蓄所の撤退により輸血用血液を県本土から輸送するのに長時間かかるようになったほか、病院内で保管する血液の使用期限切れによる廃棄が増えている実態が報告され、「献血者は増えても供血登録者は減っている。備蓄所設置に向けた検討会を開催し、出張所を含めて協議を」との意見が相次いだ。