災害時の要支援者孤立防止

災害時の要介護者の適切な避難に向けて、個別避難計画作成の研修が行われている(奄美大島介護事業所協議会と県介護支援専門員協議会奄美大島・喜界島支部の今年1月の研修)

個別避難計画 名瀬地区作成へ研修重ねる
介護事業所協など
法律では市町村に努力義務化

災害対策基本法の一部改正で、自力での避難が困難な高齢者や障がい者などの「要支援者」(在宅要介護者)を対象にした個別避難計画は、市町村に作成を努力義務化している。奄美では宇検村など独自に取り組む自治体もあるが、対象者が多く地域ぐるみでの支援が課題となっている奄美市名瀬地区では、こうした人々の災害時の孤立化を防ごうと在宅介護サービスを展開する団体が作成に向けた研修を重ねている。行政と連携しながら計画の実現を目指す。

名瀬地区の要支援者個別避難計画作成を主導しているのは、奄美大島介護事業所協議会(盛谷一郎会長)、県介護支援専門員協議会奄美大島・喜界島支部(中里浩然支部長)。昨年1月16日未明に発令された「津波警報」時、自力避難できない一人暮らしなど在宅の要介護者の多くは「避難することができずに自宅で不安な夜を過ごした」ことから、両協議会では改善に向けて個々の状況に応じた支援を可能とする個別避難計画作成の必要性を重視。奄美市長に対し同計画作成に関する要望書を提出するとともに、ケアマネジメントを担当する介護支援専門員への調査(災害時の在宅要介護者の避難に関する実態調査)に乗り出した。

調査により回答総数1844人の43%にあたる797人が「同居家族以外の他者の手助けがないと災害発生時に避難所などへ避難できない」実態を確認。現状では、ほとんど個別避難計画が作成されておらず、津波などが発生した際に避難できないことから、早急な計画作成が必要なことが判明した。介護サービスだけで対応(避難行動)することは難しく、居住する地域の自治会などの協力・支援(手助け)が必要だが、介護支援専門員は、そうした協力・支援を得る方法が分からず、関係が構築されていない実態も確認されたという。

回答した介護支援専門員全員が個別避難計画作成の必要性を感じていたことから、両協議会では作成に向けた研修会を開催。昨年、今年と研修を重ねた。介護事業所協事務局で副会長の勝村克彦さん(52)は「引き続き研修をしていきたいが、計画に沿った個々の避難実施にあたってはケアマネ(介護支援専門員)だけでは困難。近隣住民など地域の協力がないと円滑・迅速な避難はできない。間に行政が入ることで地域と一体となった取り組みが実現するだけに、計画作成段階から行政と連携して進めていきたい」と話す。

介護サービスなどの計画作成を担当する介護支援専門員は、要介護者の状態に精通している。それに基づいて実態に適した災害時の避難支援を可能とする計画作成に取り組んでいるが、1人で数十件の介護計画を管理担当する中で新たな業務が加わることになる。勝村さんは「避難行動要支援者の個別避難計画の作成は、本来は市町村が主体となること。自然災害が頻発するなか、個別計画の必要性を痛感し作成するという取り組みを行政が理解し、負担軽減に目を向けていただきたい」と語った。