泉芳朗と昇曙夢 復帰70周年記念シンポ

パネルディスカッションに登壇した(左から)司会進行の楠田氏と天野氏、叶氏、澤氏

2人のリーダー焦点に
運動の背景や歴史的意義考察

 奄美群島日本復帰70周年記念「復帰運動に学ぶシンポジウム」が23日、奄美市名瀬のアマホームPLAZA(市民交流センター)であった。瀬戸内町出身で元拓殖大教授の叶芳和氏、山形大学教授の天野尚樹氏、元瀬戸内町立図書館・郷土館館長の澤佳男氏がパネリストとして出席。復帰運動の中心メンバーだった泉芳朗と昇曙夢の顕彰と、新たに発見された資料などを読み解きながら、奄美群島の日本復帰の背景や歴史的意義などなどについて論評を展開した。

 シンポジウムは、「泉芳朗先生を偲(しの)ぶ会」(楠田哲久会長)と「昇曙夢先生を偲ぶ会」(喜入昭会長)が共催。復帰運動の中心となって東京で活躍した昇と、地元奄美で活動した泉の2人のリーダーに焦点をあてながら、群島民の99%が参加、日本復帰を成し遂げた運動の意義などについて、基調講演やパネルディスカッションなどを行い、来場者らと意見交換。基調講演前には、復帰直後のNHKのニュース映画「喜びに沸く奄美群島」の上映もあった。

 叶氏は「復帰運動は内地から始まった」とし、昇をはじめとする奄美出身者らが全国で奄美群島の日本復帰を求め運動したことの重要性を指摘。昇が果たした役割を評価する必要性を訴えた。

 天野氏は、昨年発見された泉の市長時代の日記の内容などに注目。沖永良部島と与論島の二島分離報道や、復帰に際し沖縄を含めた完全復帰から奄美群島のみの復帰を目指すこととなった泉の苦悩などを読み解いた。また、当時の国際情勢や奄美群島の復帰を決定した米国の思惑などを分析。「奄美の復帰は日本人の米国への信頼や憧れなど、現在に通じる国家観を作り上げる上で決定的な役割を担った」などと話した。

 澤氏はロシア文学者でもあった昇の蔵書が戦後、米国によって国外に持ち出された可能性が高いことを指摘。「貴重な文化財として、米国に返還を求める必要があるが、困難が予想される」などと話し、「故郷である加計呂麻島に昇曙夢記念館を建てることができれば」とを語った。

 シンポジウムでは3人が日本復帰に対する思いなどを語った。天野氏は「奄美の近現代史についての研究はまだ少ない。今後新たな資料などが発見されることを期待している」とし、復帰70周年を契機とした地元住民らによる復帰運動の研究や伝承活動を呼び掛けた。