バリアフリー演劇楽しむ

手話や字幕を交え演劇「ヘレン・ケラー」を演じる役者たち

ヘレン・ケラー、多様に表現
手話や字幕、音声ガイド 劇団風が奄美公演

 目や耳の不自由な人も同じ空間で演劇を楽しめる「バリアフリー演劇」を手掛ける劇団「東京演劇集団風」の奄美公演(全国手をつなぐ育成会連合会など主催)が23日、奄美市名瀬の奄美川商ホールであった。特別支援学校などの子どもたちを招き、保護者や一般市民を含む約700人が来場。観客らは、手話や字幕、音声ガイドを織り交ぜた演劇「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」を鑑賞し、心通う物語を楽しんだ。

 奄美療育ネットワーク、奄美中央ロータリークラブ、行政など島内関係団体でつくる実行委員会が連携し運営。要約筆記のほか、奄美看護福祉専門学校の学生ら50人を超えるボランティアがサポートした。

 同劇団は「誰もが一緒に舞台を楽しむ」を目的に、2018年からバリアフリー演劇に取り組んでいる。演目は、幼い頃に聴力や視力を失ったヘレン・ケラーが、新米家庭教師のアニー・サリバンとの出会いを機に心を開いていく物語。演劇では、手話通訳者が役者として溶け込んでセリフを伝え、舞台の背後には光の字幕を投影。役者の動きは音声ガイドで伝達するなど、障がいの有無に関わらず多様に楽しむ工夫が随所に盛り込まれた。

 ステージでは、次々と場面を転換しながら、役者11人が約2時間の物語を演じた。鑑賞した子どもたちからは、「心に響くストーリーに感動した」「諦めないことが大切だと感じた」といった声も上がった。

 公演後、宮田智子実行委員長は「少しの工夫や配慮があれば劇や芝居もみんなが楽しめる。貴重な体験を生かし、これからもバリアフリーの環境を広げていければ」と話した。

 事業は、文化庁などが進める「2025大阪・関西万博に向けた文化芸術ユニバーサルツーリズムプロジェクト」で実施。実証ツアーの一環として、島外の障がい者22人も訪れた。25日は、龍郷町の龍南中学校体育館でも開かれる。