鹿大島嶼研・海洋展示館「渚のいきもの勉強会」

「奄美大島の海を調べるプロジェクト」と「宇検村の里海づくり」について語る中野恵さん(25日=海洋展示館シアタールーム)

海の調査で宇検村〝里海づくり〟
ヤドカリ、ウツボ、ウニ研究発表

鹿児島大学国際島嶼教育研究センター主催の「奄美群島の渚のいきもの勉強会~身近な海に、なにが暮らしているのか~」が25日、奄美市名瀬小宿の奄美海洋展示館であった。同センター奄美分室の吉川晟弘(あきひろ)特任研究員(31)は、専門とするヤドカリと、共生するイソギンチャクの研究発表を行った。同展示館の飼育員らは〝趣味〟で収集したウツボの生態を紹介するなどした。奄美大島の海を調べ、生活との共生を図るプロジェクト発表もあった。

吉川特任研究員は、ヤドカリと共生するイソギンチャクなどの生き物が550種以上あり、すみかとしての役割が海の生態系を保つ一因と発表した。

同展示館の小瀬村岳(たける)飼育員(21)は、趣味だというウツボの生態を発表。日本には80種おり、うち23種を同展示館で展示していると話した。55種を展示することが目標だという。

高村洸介主任学芸員は、ウニの一種で南西諸島に多いガンガゼ目のミナミヒラタガゼが、宇検村名柄が北限であることを発見したと発表した。

環境保全と地域問題に取り組む公益財団法人・日本自然保護協会の中野恵さん(48)は、「もっと知りたいシマの海」と題して講演。奄美大島北部と南部で行っている調査を報告した。海水から生息する生き物を調べる環境DNA調査と、実際に潜水し海底を調べる「ライントランセクト」調査によるデジタルデータの比較で、サンゴや生き物の変化が解析できるという。

ハマサンゴを中心とした調査では、オーストラリアのグレートバリアリーフで多くの報告がある、通称〝パープルスポンジ〟と呼ばれるカイメンの仲間が、龍郷町芦徳の水深5~8㍍でのみ確認されたと話し、「突然広がり始めた。生態そのものの研究は進められていないが、サンゴを覆って殺してしまう可能性がある」と警鐘した。

同協会では、宇検村焼内湾を取り囲む各集落で高齢者などへの聞き取り調査を行い、1960年代からの海の変化の研究も行っている。中野さんは「宇検村と協働で、2026年を目標に持続可能な海と、地域コミュニティの文化の継承を図る〝里海づくり〟の活動を進めている」と語った。