「日本復帰」題材に絵本制作

完成した絵本を手に安田市長と児童代表の白濱さん(手前左)


奄美群島の日本復帰運動を題材に名瀬小児童が挿絵を描いた創作絵本『ばあちゃんちのパスポート』

市メモリアル事業 名瀬小児童21人が挿絵
贈呈式で完成喜ぶ

 奄美群島の日本復帰運動を題材に、現代の島に暮らす小学生姉弟が島の歴史を学んでいく物語を描いた創作絵本『ばあちゃんちのパスポート』をこのほど制作した。名瀬小学校(上村英樹校長)では19日、出来上がりを祝う「贈呈式」があり、挿絵を描いた児童らが、日本復帰の歴史を伝える絵本の完成を喜んだ。

 70周年を記念し市の若手職員らが中心となって企画するメモリアル事業の一環。副題には「語り継ぐ~次世代へ~」と添えた。

 絵本は、米軍政下時代のパスポートを祖母の家で発見した小学生の姉弟が、島の歴史に興味を抱き、図書館や博物館を訪れ、戦争や復帰運動について学んでいく架空の物語。終盤には祖母と平和について語り合う場面も描かれ、「家族や身の回りの人と語り合い、後世に語り継ぐ契機に」との思いを込めた。

 絵本は28㌻(20×20㌢)。あらすじは市教育委員会学芸員の照屋真澄さんが考え、挿絵は名瀬小学校5・6年生の児童21人が手掛けた。企画は7月に始まり、約半年で完成。巻末には「日本復帰までの歩み」と題し、年表や写真も載せた。

 贈呈式で、安田壮平奄美市長は「後世につなぐきっかけとして、授業でも活用いただきたい」とあいさつし、完成本を児童に手渡した。児童代表でお礼の言葉を述べた6年の白濱ひなのさん(12)は「今の私たちの生活が当たり前でなく、先人の努力が紡がれて今があることを、絵本を通して伝わってほしい」と願った。

 絵本は1千冊を制作。市内の小中学校などに配布する予定だという。

 制作を振り返った照屋さんは「素晴らし出来で挿絵がすべて。描いた子どもたちも勉強して意図をくみ取っており、個性が光る絵本ができた」と喜んでいた。