「徳之島上国日記集」刊行

伊仙町誌資料集②「徳之島上国日記集」の刊行を発表した大久保町長や松岡室長ら=2日、同町役場

幕末の様相 「与人」古文書で浮き彫りに
伊仙町誌編纂室

 【徳之島】伊仙町教育委員会社会教育課町誌編纂(へんさん)室(松岡由紀室長)は、同町誌編纂事業の第2弾「令和版伊仙町誌資料集②『徳之島上国日記集』」を刊行した。幕末の1841(天保12)年~1870(明治3)年の「与人(島役人)」5人の薩摩藩への上国日記の史料(古文書)を現代語訳で解説。当時の献上物の状況、決死の覚悟で1か月以上を要した船出、歴史上の「薩英戦争」遭遇も登場する。町誌編纂の藩政時代の考察にも反映させる。

 「徳之島上国日記集」は、2022年刊行の「同町誌資料集①『いせん』」(「更生の伊仙村誌」、「伊仙町誌」の合冊復刻版)に続くもの。A4判、全531㌻。2日、大久保明町長や伊田正則教育長、松岡室長らが発表・報告した。

 薩摩藩の慶事などで鹿児島に赴いた当時の状況をつづった「上国日記集」の与人たちは、勇喜應、佐和統、道統、義祐喜、美代川の5人。これら古文書・書写本は伊仙町歴史民俗資料館(道統上国日記)や徳之島町郷土資料館などが所蔵。草書体の全史料の翻刻と現代語訳は、令和版伊仙町誌「琉球王朝・薩摩藩時代部会」委員の先田光演氏が協力した。

 松岡室長によると、献上品として塩豚を調達してつぼに詰め、芭蕉布や黒糖を作っていた様子から、抜かりなく労力をかけて備えていた。島役人として薩摩藩士と親交を深めることで情報を得つつ、島側の要望を伝えるのも大切な任務だった。献上物を届けることで自分のみならず子孫まで郷士格を得られる仕組みだったことが明確に記されている。

 また、片道1か月以上かけて上国を果たした際、歴史上の「薩英戦争」に遭遇。大量の献上物を嵐で失ったことなども克明に記録している。「群島内でも徳之島に最も多く残る上国日記を通し、江戸時代末期の徳之島の様子や他の島の与人との交流の様子、振る舞いも読み取れる」と強調する。

 大久保町長も「歴史上の新たな事を解明することは大事で、誇りと勇気を抱くことにもつながると思う。町史編纂を進めていただいている関係者に感謝したい」と述べた。

 第3弾の同町誌「資料集③」は、昭和40年代以降の町広報誌の集成を計画している。

 今回の資料集②の初版は500冊。定価2500円(税込み)。同町歴民館や町直売所百菜、小売店などでも販売予定。問い合わせは同町誌編纂室(電話0997・86・4183)へ。