生徒を前に体験談を講話する赤塚さん
奄美市笠利町の笠利中学校(久津輪修一校長、生徒32人)で8日、同校音楽室で人権学習の一環として「人権講話」を開いた。ハンセン病家族訴訟原告団「あじさいの会」会長代行の赤塚興一さん(86)が講話。生徒らは父がハンセン病患者だった赤塚さんの体験談などに耳を傾け、無知から生まれる差別や偏見について考えた。
「ハンセン病を正しく理解する週間」の一環。生徒のハンセン病への理解を深めようと、毎年この時期に話し合いや講話を通じた学習に取り組んでいる。
赤塚さんは、3歳の時に父がハンセン病に感染。父は小学3年生だった1947年に、奄美和光園などの療養所に強制隔離された。父の身体は元気で、当時はすでに治療薬があったにも関わらず、赤塚さんは「ある日突然いなくなった。6年間一緒に暮らしていた家族も病気にはなっていない。無知が罪をつくるということだ」などと訴えた。
父が隔離されてから赤塚さんは、周りから「こじき」と呼ばれ、理由もなく顔を殴りつけられるなどの差別も受けてきた。「大半は偏見からきている。(強制隔離などを伴う)らい予防法は人間が生きたいという権利や尊厳を奪っていった」などと強調。生徒へは「知らなければ差別は生まれる。同じ過ちを繰り返さないためにも、弱い立場の人を守るという意識なども培ってほしい」と呼び掛けた。
3年の林美奄(みあ)さん(14)は「これまで療養所職員の話を聞いてきたけど、家族の体験も聞くことができてよかった。今だからこそ新たに勉強し、知識を持てるように学ぶことが大事だと思った」と話した。
講話に先駆けては、同校の野口淑子教諭が「ハンセン病の歴史・奄美の状況・国賠訴訟・家族訴訟」と題する授業を実施。正しい知識を学んだほか、伝言ゲームなどを通じて情報伝達の不確実性なども実感した。