総勢21人が登壇し研究発表を行った(15日、アマホームPLAZA)
東京大学大気海洋研究所は15日、奄美市名瀬のアマホームプラザ(市民交流センター)で、奄美群島を研究フィールドとした総合知を発表するシンポジウム「奄美を探る:産学官民連携の実際」を開いた。5部構成で行われ、前半3部は人文社会・地球科学・生物学の分野から地元研究者や大学教授らが登壇した。第4部では、奄美群島における「産官学連携」の実例が官民の当事者によって語られた。16日は第5部として、「〝協働〟研究」をテーマに開かれる。
シンポジウムは、4年目となる「亜熱帯・Kuroshio研究教育拠点の形成と展開事業」と、2023年度にスタートした「市民参加による海洋総合知創出手法構築プロジェクト」の合同開催。2070年に東北以南が亜熱帯化するという予測に基づき奄美群島で行われている先行研究の発表の場となった。
人文社会分野では、瀬戸内町教育委員会社会教育課(埋蔵文化財担当)の鼎丈太郎主査が「久慈白糖工場跡」について、国内最古級のれんが造りの建物で、使われたれんがは「得意な技術系譜にある」と発表した。
立神倫史古仁屋高校教諭からは、同工場跡から出土したれんがについて、同校の生徒が大気海洋研で行った胎土分析についての報告があった。16日午後のポスターセッションで詳細が報告される。
地球科学・生物学の研究発表では、奄美群島周辺での海洋地質調査や、褐虫藻を持たない「無藻性イシサンゴ」の生態研究などに注目が集まった。
シンポジウムの重要なテーマとなった「産官学連携」では、安田壮平奄美市長が、奄美大島全体を大学のフィールドと位置付けた〝共同キャンパス構想〟の現在地を報告。大学の知見との交流で、人材育成や事業の創出につなげたいとした。
九州財務局鹿児島財務事務所名瀬出張所の川西浩司所長は、大島高校が進める「奄美群島高校探究コンソーシアム」で、東京大学と教育関係者との「つなぎ」役となった例を示した。
県大島支庁の廻(めぐり)秀仁地域企業振興監は、財務省が地域連携の取り組みとして全国で進めている「地域解決よろず支援」を紹介。観光業の「稼ぐ力」の向上には、地域住民と観光客が価値を共有・共感し「高付加価値化」を図ることがポイントなどと話した。
兵藤晋海洋研所長は「亜熱帯研究をする学者が増えている。知見を共有し、将来を担う人材育成につなげたい」と語った。