「金作原を環境教育の場に」

金作原のゲートは、住民と自然を隔てる門となってはならない(資料写真)
「奄美の自然を考える会」は12日、奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の協力を得て、5年ぶりに金作原観察会を実施した(提供写真)

自然を考える会 同行ルール緩和を要求

1968年に設立され、奄美市の金作原国有林で定期的な観察会を続けてきた「奄美の自然を考える会」(森山力藏会長)が、2019年2月の利用適正化試行ルールによって同地から事実上締め出されている。「自然観察指導員」が複数所属する同会は24年10月、奄美大島利用適正化連絡会議の事務局になっている県に対し、「(指導員を)認定ガイドと同等の扱いとする」「島民最優先に配慮する」ことを求め要望書を提出した。

金作原は、樹齢150年以上の天然の亜熱帯常緑広葉樹が多数残る太古の森。1871(明治4)年に国有林に編入され、1983(昭和58)年までに自然教育観察林(林野庁)や保健保安林(農林水産大臣など)に指定された。世界自然遺産の核心(コア)エリアの一つ。

連絡会議は、奄美大島の自然環境を保全し、観光資源としての適正な活用を図ることを目的に2017年に設立。国(環境省・林野庁)、県(自然保護課)、市町村、自然保護団体などが協議を重ね、エコツアーガイド同行や一般車両の駐車禁止などの試行ルールを導入してきた。

考える会は、初代会長の大野隼夫氏(故人)が鹿児島森林管理署の依頼で、樹木の名札設置に協力するなど金作原の価値を高める活動を続けてきた。

近年は、地元住民や小中学生などを対象に月1~2回の観察会を実施してきたが、「認定ガイド同行のルール導入以来、5年以上にわたり観察会が開催できない状況」となっている。

森山会長は「観察会ができなくなり、多くの子どもたちは、金作原の自然を知らずに島を離れてしまった」「金作原は観光客だけが見ることができる〝閉ざされた自然〟になった」と話し、住民軽視の試行ルールに憤る。

10月に提出した要望書は、11月の同会議でも読み上げられた。出席者からは、「自然観察指導員は認定ガイドより知識が豊富」とする意見があり、同会の要望に賛同する立場が示された。県は、「子どもの学習機会創出の観点から検討に値する」と回答している。
 〝閉ざされた自然〟金作原が、環境教育の場となるルール改訂につながるのか、検討会での議論と柔軟な対応が求められそうだ。