出来上がった冊子を手にする町埋蔵文化財センターの藤崎さん(提供写真)
『海辺の植物ミニ図鑑』発行
喜界町埋蔵文化財センター
喜界町教育委員会埋蔵文化財センターはこのほど、荒木中里遊歩道周辺一帯にある国指定天然記念物「喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落」に生息する植物をまとめた冊子『喜界島の海辺の植物ミニ図鑑』を発行した。国指定10周年を記念し制作した。絶滅危惧種に分類される希少種9種類などを含め、全90種類が網羅されている。
国の天然記念物には2014年3月に指定された。喜界島は隆起サンゴ礁でできた島で、特に海岸線を縁取る完新世時代(約1万年前~現在)にできたサンゴ礁地帯は、海水や潮風、高温や乾燥などの非常に過酷な環境にもかかわらず多くの群落が見られ、植生の連続的な変化が広域に残る全国でも希少な地域だという。
制作に向けては、センターの職員2人が約1年をかけて現地をくまなく調べた。冊子では、地質や地形など、生育環境の異なるエリアを11区画に分けて、それぞれの植物には写真や花期、方言名や解説文を添えて紹介。例えば、定期的な冠水や潮が直接当たる海岸寄りのエリアで主に生育する「リュウキュウコケリンドウ」は、絶滅危惧種Ⅱ類、花期は3~5月で、「海岸近くの芝地で比較的によく見られる。奄美大島でのものは喜界島などの移入とされる」などと案内している。
この地域の植物をまとめられた書籍はこれまでになかった。編集を手掛けた同センターの藤崎誠之さんは「大人だけでなく子どもにも島の植物を知ってほしい。身近な植物を学ぶことで、大切にする気持ちが養えれば」と期待を込める。
冊子はA5判カラー36㌻。同センターや島内の公共施設など数か所に設置し、無料で配布している。