「人はなぜ島をめざすか…」

「人はなぜ島をめざすか…」

九州離島で初開催の「九州縄文研究会・鹿児島(徳之島)大会」=23日、天城町

第30回九州縄文研究会 天城町で開催
基調講演・研究発表で交流

【徳之島】第30回九州縄文研究会鹿児島大会(九州縄文研究会主催)が23日、天城町防災センターであった。会員研究者や地元関係者ら約40人が参加。「島々の考古学~人はなぜ島を目指すのか~」をテーマに、九州・沖縄に所在する島々の縄文時代を中心とした考古学的な研究成果・情報を集成した発表や討論で交流した。24日は島内の遺跡見学会も予定している。

九州縄文研究会(会長・宮本一夫九州大学副学長)は、九州の縄文時代に関する研究者たちで1983年に発足した任意組織。98年以降は毎年テーマを設定して研究成果を集成した資料集も作成し、九州8県持ち回りの研究大会で交流。鹿児島大会は今回で5回目、離島開催は九州初という。

宮本会長は開会あいさつで「先史時代・縄文時代の人々が島々に渡り、島々の人々と共に新たな文化を形成していくには、人の意志があって、社会・生活を変えていく原動力になったとも感じた。鹿児島県・徳之島の皆様のおかげで(離島開催が)実現。地域の文化交流に寄与できれば」と述べた。

鹿児島県内の重要先史遺跡の発掘調査・研究に長年携わった県埋蔵文化財調査センターの堂込秀人氏が演題「縄文時代の奄美について」でまず基調講演。面縄貝塚などの調査経緯にも触れ、縄文時代研究の視座からの課題に①地域研究の深化②地域史の再構築(地域の人が語る地域史の確立など)③列島文化の中での位置づけ―なども挙げた。「時間は掛かったが、奄美の縄文時代を通史的に概観できるとこまできた」とも評した。

研究発表・報告には▽「『島々の考古学』は何を目指すか」(県立埋蔵文化財センター・前迫亮一氏)▽「天草諸島の縄文時代遺跡」(山崎純男氏)▽「沖縄の島々をめぐる縄文コネクションと近海ネットワーク」(沖縄県立博物館・美術館・山崎真治氏)▽「縄文時代における薩南諸島の人々」(鹿児島女子短大・竹中正巳氏)▽「下原洞穴遺跡の発掘調査成果について」(天城町教育委員会・具志堅亮氏)―ら含む7人が登壇した。

ほか「長崎県島嶼部の縄文時代遺跡群について~対馬島・壱岐島・五島列島を中心に~」(長崎県教委・中尾篤志氏)ら17人が発表要旨・資料集(計539㌻)に紙上発表した。

討論会では、形質人類学的見地からの人骨(頭骨)の特徴、ヒスイ(新潟県糸魚川産)や黒曜石(佐賀県腰岳産)などの伝播交流の背景、仲介者が存在した可能性のある鯨の追い込みなど漁労―に関しても持論を展開し合った。

遺跡見学会は面縄洞穴・カムィヤキ古窯群(伊仙町)、下原洞穴・ウンブキ(陸の中の海、天城町)などを予定している。