大島養護学校で生徒の作業学習の風景を見学する島内企業の人事担当者ら
龍郷町の県立大島養護学校(中村周一郎校長)は2日、島内企業を対象とした就労ネットワーク会議を開いた。企業の人事担当者などに校内の見学や講話、意見交換を通して、同校の就業支援の取り組みや障がい者に対する理解を深めてもらい、障がい者雇用の促進を図るねらい。同日は医療や介護・ホテル業など9社が参加、実際に生徒らの作業学習風景を見学し、障がい者雇用のイメージをふくらませていた。
障がい者雇用の促進に当たっては、雇用する企業の側の障がい者に対する誤解や認識不足も課題の一つとなっている。今回の会議は、島内企業に同校の生徒たちの特性や個性をより理解してもらった上で、雇用の可能性についても検討してもらおうと初開催。
はじめに進路指導担当の春口陵二教諭が同校の概要を説明。仕事を行っていく心構えや気力、体力をつけるための作業学習及び、特別支援学校独自のカリキュラムによる「電話の対応」「買い物の仕方」「バスの時刻表の見方、乗降の仕方」など『日常生活での活用』に比重をおいた授業展開について紹介。
知的障がいのある生徒については、一般的に繰り返しの作業が得意なことや、まじめで根気があることなど長所をアピール。就労体験を通して職場と生徒のマッチングを図っており、離職率も同年代の高校生と比較するとかなり低い現状も伝えた。また「あまみ障害者就業・生活支援センター」と協力した卒業後のバックアップ体制なども紹介。春口教諭は「うちの生徒はまじめで根気強く若くて体力もある。島の子たちが島で働けるよう障がい者雇用への理解をより深めていただけたら」と呼びかけた。
続いて名瀬公共職業安定所の担当者が管内の障がい者雇用の状況や、法定雇用率の算定基礎の見直しなど法改正の動き、障がい者トライアル雇用奨励金など支援制度等について紹介した。
校内見学ではクリーンサービス、園芸、木工、縫製、窯業など生徒たちの作業学習の様子を見て回ったほか、企業の人事担当者らが積極的に生徒に声掛けし、それぞれのコミュニケーション能力などを確認していた。
その後の意見交換では「元気で明るい」「あいさつが良く礼儀正しい」「仕事ぶりが非常に丁寧」など好印象を抱いた参加者が多かった一方、「社内で今ある役割だけでなく、その人の特性にあった仕事を会社の中で見つけていくことも必要」「社内全体に対する障がい者への理解を、どのように進めていくべきか検討がいる」など、実際に雇用した際のイメージもふくらませていた。
参加したホテルビッグマリン奄美の中原幸三・営業企画課長は「個人差はあるが、思っていたよりコミュニケーション能力が高いことに驚いた。正直、誤解していた。障がいもその人の個性の一つとして捉えれば、可能性はいくらでも開けるように感じた。一緒に仕事をするイメージも持てた」と印象を語った。
中村校長は「たんに作業が出来ればいいということではない。日常生活に関する指導や対人関係などの教育も小学校段階から順を追って進めているが、一般就労をしていくには、どんなところを教育してほしいか、企業の側からも学校へどんどん伝えてもらいたい。それに私たちも応えられるよう努力していけたら」と話していた。
同校では企業の学校見学も随時、受け付けている。問い合わせは大島養護学校(℡0997―62―3050)まで。