金久中・川畑教諭 日展に作品

出展しているケンムンの彫刻作品と川畑さん

愛らしさと怖さの共存
ケンムン 彫刻で表現

【東京】国立新美術館(港区六本木7)で開催中の日本最大の総合美術展、改組 新 第2回日展(主催・公益社団法人 日展〔日本美術展覧会〕)に、奄美市立金久中学校美術教諭で彫刻家の川畑祐徳さん(46)の彫刻作品が展示されている。テーマは奄美のケンムン。愛らしさと怖さが共存するケンムンと、ケンムンが棲む奄美の森独特の空気感を感じさせる作品は、多くの来場者の目を惹きつけている。

川畑さんは、国内のみならず海外でも高い評価を得ている彫刻家。一昨年の日展では田中一村像を出展し、その後、県奄美パーク・一村記念美術館に作品を寄贈したほか、東京や大阪での作品建立、ニューヨークでのGCA国際彫刻コンペ3位など、活発な創作活動に取り組んでいる。日展は、一般公募で最高賞の「特選」を2回受賞した人を「出品委嘱者」としていたが、組織改革に伴い今年から「準会員」へと変更に。08年と10年に特選を受賞している川畑さんは、今回から準会員として同展に作品を出展している。

川畑さんの作品タイトルは「kenmuon~奄美の森の木の精霊~」。そこにいるのは、ガジュマルの枝に座り、原生林の木漏れ日を見上げるように空を指差し、屈託なく笑う2人の兄弟。まだ幼さが残るあどけないその表情は、どこまでも愛らしい。しかし、ひょろりと長い手足の様子やとがった耳と小さな牙。そして大好物のために既に食べてしまったのであろう、手にしている目玉のくりぬかれた魚が、2人がケンムンであることを物語っている。

3年前に奄美に赴任。その環境を生かして「奄美で1本論文を書きたい」と思い、奄美ならではの「造形美」を探す中でケンムンに出会ったという川畑さん。ケンムンについての取材を重ねる中で、「時代の流れと共に奄美の神概念が変わったのでは」と思い至った。昔は言葉にすることさえ恐れられたケンムンが、現在は「ゆるキャラ」的に捉えられており、時代の中で変化してきた愛くるしさと怖さが共存する一つのケンムン像を、今回の作品に掘り起こした。

作品は「ぜひ奄美の人たちに見てもらいたい」と川畑さん。会期の12月6日(日)まで、鑑賞することができる。

同展は毎週火曜休館(ただし4日は休館)。観覧時間は午前10時~午後6時(入場は午後5時半まで)。12日は「日展の日」で入場無料。料金は一般1200円(前売り券・団体券は千円、午後4時以降販売の当日券300円)、高・大学生700円(同500円、200円)、小中学生無料。問い合わせは日展事務局(電話03‐3823‐5701)まで。