オス成虫を誘引して殺虫するテックス板。今後侵入ルートとなりうる箇所に設置を進める(沖縄県病害虫防除技術センター提供)

植防名瀬支所 体制、連携強化へ
奄美大島以外でも対策検討

ミカンコミバエの急増に伴い、各方面で動揺が広がる奄美大島。果樹類や果菜類などの移動規制が決定されたほか、今後の防除対策強化に向けまん延防止・駆除対策が必要となる。現場では奄美群島の防疫対策を担う門司植物防疫所名瀬支所の役割が求められるが、業務量が増加することから、今後の対策強化を実施する体制強化・強化や地元行政機関などとの連携が求められるほか、奄美大島以外の島でも自治体独自の対策を検討している。

同支所は植物防疫法に基づき有用な植物を害する動植物(害虫や病原体)の移入・移出を防ぐための検疫を行うことを主な業務とする。ミカンコミバエ関連は1986年の根絶以降も、群島内232カ所にトラップを設置し、侵入警戒調査網を敷いて定着防止に努めてきた。

今回のケースでもミカンコミバエの侵入を確認し、9月から県や地元自治体の協力を得て誘引剤や殺虫剤を染み込ませたテックス板を設置するなど初歩的な防除を実施したものの、継続的な誘殺がみられたことから、大規模な対策を行うこととなった。

根絶に向けたまん延・駆除対策として、▽奄美大島内のトラップ密度増強、奄美群島全域のトラップ増設▽月1回の果実寄生状況調査▽野生寄主植物などの把握▽侵入ルートとなり得る公道や海岸線、集落でのテックス板設置―など。

植物検疫官は移動規制についても、①移動禁止区域内の対象果実廃棄命令、確認②移動禁止区域外の生果実の移動許可にかかる汚染防止措置の確認③港、空港での監視など検疫体制強化―などの業務が加わる。

同支所は現在、事務職を含め9人で群島全域の業務を遂行しているが、農水省担当者は「今後の防疫対策を行うには人数が足りない」と説明。横浜や門司など植物防疫所本所からの職員応援に加え、鹿県や地元自治体と連携して対策に乗り出す方針だ。

喜界町では昭和40~50年代にかけて、ミカンコミバエによる果樹などの移動規制があった。また、12年前に発生が確認され、3年前に根絶した柑橘類に致命的な被害を与えるカンキツグリーニング病(CG病)の防除事業を経験している。今回、島内10カ所のトラップではミカンコミバエの確認はされなかったものの、隣島の“激震”に危機感を募らせている。

同町農業振興課によると、ケラジミカンや喜界ミカンなど在来柑橘類があり、畑かん営農による園芸を推進する上でも「病害虫の侵入は脅威になる」と分析。今月2日のミカンコミバエ誘殺状況の公表後、町独自にテックス板300枚の購入を検討。すでに12月補正に予算計上し、議会承認が得られれば3カ月間かけて設置を進めたい意向という。

同課担当者は「CG病の教訓から、未然の侵入防止対策は必要。奄美大島でのテックス板使用や議会承認もあり、確保できるか不透明だが、過去の防除に携わった人の意見も参考にしながら、設置場所を検討していきたい」としている。

このほか、町では住民に対し6日から8日まで、対象果実・果菜について、奄美大島からの持ち込み・入荷禁止や、町内産は出荷できることなどを防災行政無線で呼びかけ、周知を図っている。