衝撃ミカンコミバエ

早期対策が求められているタンカン(資料写真)

温度差なくし協力を
多い放任園地 適正管理が重要に

果樹の害虫ミカンコミバエの増加に伴い、奄美大島全域で来月から果実類全般と果菜類全般の移動規制措置がとられる。果実類の中でも年生産額4億円を超えるタンカンは、奄美の果樹農業の中核を担う存在だ。JAあまみ大島事業本部果樹部会長の岡山俊一さんは、「生産者や関係機関だけではなく、奄美大島全体の問題ととらえ、一刻も早い根絶に向け一丸となった取り組みが必要だ」と全島挙げての協力を呼びかけている。

岡山さんは5日に、いちき串木野市で開かれた県果樹振興大会に出席。同大会で県農政部の谷口修一次長、翌6日には県食の安心・安全課に対し、▽誘引剤や殺虫剤を染み込ませたテックス板の確保▽廃棄果実に対する所得補償▽根絶に向け果実の廃棄方法▽自生果樹の伐採―などへの全面協力を要望した。

タンカン栽培を巡っては近年、奄美柑橘クラブなど若手生産者が増加。Iターン者なども栽培するなど機運が盛り上がりをみせていた矢先の移動規制措置となり、岡山さんは「奄美果樹農業に爆弾が落とされた思い。この流れを変えないためにも安心して生産できるようにしないといけない」と前を向いた。

農水省の試算では、今回の移動規制で損失額は約7億4千万円としているが、「果実類は島外出荷が多く、流通や雇用などを考慮すると、経済的な損失はさらに膨れ上がる」と懸念。規制に伴う風評被害や観光面への影響も危ぐされることから、「今回は生産者や関係機関だけに被害が出るわけではない。住民間の温度差をなくし、島全体の問題という認識を持って一丸となって取り組む必要がある」と訴えた。

タンカンの生産環境について、「奄美は他産地と比べ、管理が行き届いていない放任園地が多く、病害虫の温床になっている」と指摘。放任園から周辺の園地へ病害虫の移動に加え、台風など自然災害による侵入リスクもあることから、「現場側は常に危機意識を持ち、適切な施肥や薬剤散布など適正管理をしてほしい」と協力を呼びかけた。

岡山さんによると、ミカンコミバエは6、7月頃に奄美大島への侵入を確認。ミバエの誘殺は主に自生のグァバ周辺で確認された後、拡大が進んだという。きょう9日には、奄美市名瀬の奄美観光ホテルで説明会が開催されるが、「国の対応や初動体制の遅れなどについて、問題はなかったか、責任は追及したい」と強調した。

また果樹園の栽培管理には肥料や薬剤など、多額の費用がかかることから、「必要経費への助成や生産補償は重要。離農者が出ないようにするためにも、生産者が安心して栽培できる補償を勝ち取りたい」と話した。