ミカンコミバエ飛来に関する初期情報の提供遅れに生産者から国への不満が示された
果樹の害虫ミカンコミバエの増加により、奄美大島全域で植物防疫法に基づく緊急防除対策が実施され、来月から移動規制が始まるが、ミカンコミバエは6月時点で数匹が奄美市で確認されていたことがわかった。7月、8月にも誘殺されており、農林水産省が公表した9月以前にも確認されていることから、9日にあった説明会ではタンカンなど果樹生産者から初期段階の情報提供の遅れに国への不満が示された。
奄美大島におけるミカンコミバエ種群の誘殺状況は、農水省消費・安全局が説明。これまでは9月以降について公表しているが、「6月に奄美市で数匹確認したが、定着しない形。南西諸島には毎年、風に流されて台湾やフィリピンなどからミバエが飛来しており、昨年は沖縄で80匹確認された」とした。
7月、8月の誘殺状況も報告。それによると7月は20匹で、同月中旬は10匹以下、同月末以降は減少傾向(1~2匹)、8月は月全体で8匹にとどまったという。同局は「風による飛来と考えられるレベル」と述べた。
これに対し説明会に出席した生産者は「誘殺数について農家には何も知らされず、11月2日の報告会で初めて知った。6月時点で飛来が確認されていたのに、長い期間、農家には何も知らされていない。6月の段階では数は少なくても、国は『危ない』という認識はなかったのか。防疫担当者だけでなく県や市町村の果樹担当者も加わる形で影響を判断すべきだったのでは」「誘殺数の急増が報告された後、2日後に開かれた国の防除対策検討会議で来月から2017年3月までの移動規制が決定した。農家への報告から規制決定まで期間がわずかであり、報告は遅きに失した。飛来が確認された時点ですぐに農家に情報提供すべきだった」と農水省の対応を批判。
これに対し同局は「誘殺数は毎年あるが、こうした情報が生産者に伝わらなかったことは反省したい。初期対応はマニュアルに沿って進めたが、誘殺数に関する情報を農水省や植物防疫所のホームページ等で常に出す方向で取り組みたい」と述べ理解を求めた。
なお説明会では、有人ヘリコプターにより上空からまくテックス板(誘引剤や殺虫剤を染み込ませたもの)の散布が今月中旬から開始されることが明らかになった。ミカンコミバエが集落外の放任園や野生寄主植物の群落で発生している可能性を考慮したもの。山間地や崖部へ散布するもので50~60日間隔で実施。2回目は年明けになるという。