早期根絶へ作物廃棄を

ミカンコミバエの侵入にかかる経緯や、今後の所得補償などについて説明があった

価格補償 農家など声参考に決定へ
奄美市で説明会

奄美大島でのミカンコミバエの急増を受け9日、奄美市名瀬の奄美観光ホテルで奄美大島における防除に関する説明会が開かれた。生産者や流通関係者からはミバエの早期根絶を目指し、対象作物の廃棄処分を求め協力を呼びかけた一方、移動規制下でも島外出荷が可能な加工品を製造・販売する業者からは、生産物の確保を求める声も。また廃棄時の価格補償については、生産農家やJAなど関係機関の意見も取り入れ、品質に応じて決定していくことを確認した。

説明会には農家など約270人が出席した。農水省や門司植物防疫所の幹部らが、ミバエの侵入確認時期や数、今月初旬まで行ってきた根絶対策のほか、緊急防除における移動規制の範囲など詳細について説明。今後の防除対策について解説した。

その後行われた質疑応答では、タンカンなど果樹を中心に栽培している農家が過去の根絶事例を挙げ、「前回の根絶事業は廃棄処分がなかったこともあり、根絶までに長い期間を要した」と強調。生産農家の代表者を集めた意見集約として、早期根絶対策には果実廃棄の必要性を確認したことから、大規模タンカン農家を中心に果実の全廃棄処分する意向を示すとともに、兼業農家などへの廃棄への理解と協力を呼びかけた。

島内流通や自家消費が認められ、加工品の島外出荷も可能になる今回の規制について、流通関係者からは「これらのことは根絶を目的に移動規制する措置と相反する。地元産を犠牲にしてでも、対象作物はできるだけ廃棄処分した方がいい」との指摘も。別の関係者も、消費者が本土に発送する可能性を懸念し、島内流通の制限を訴えるとともに、取り扱い量減少による補償を要望した。

一方、加工業者などは加工品の製造・販売に向け島内出荷を訴える声もあるなど、立場による思惑の違いが鮮明に。島内消費や加工品用との線引きが難しいなか、国による全流通の禁止を要請する意見も上がったが、農水省植物防疫課の島田和彦課長は、「(植物防疫法)の法律上、個人が所有する作物の用途について規制はできないが、(廃棄に)協力してもらえるのであればお願いしたい」と述べるにとどめた。

廃棄にかかる価格補償については、多くの生産者から納得した金額や早期公表を求める意見が続出した。島田課長は「農家やJAなどの意見や品質を参考に、適正価格を設定したい。出荷が迫る果実もあり、鹿県と連携して速やかに公表したい」と説明し、国として県を通じて必要な財政支援を行う考えを示した。