果樹で主力のタンカン。早期根絶へ果実の全量廃棄を求める声が強まっている
9日に奄美市であった農林水産省による説明会。「ミカンコミバエ種群の防除対策検討会議」(4日開催)の結果が報告され、移動規制が決まった経緯が明らかになった。
検討会議で委員からは、果実(自生しているグアバが寄主果実)から幼虫が確認されていることを踏まえ、「島内の一部の果実を介して、ミカンコミバエ種群が島外にまん延する可能性がある」との指摘があったという。それにより、これから収穫期を迎える奄美大島のポンカンやタンカンなどの寄主植物の果実は、▽奄美大島全島(加計呂麻・請・与路を含む)を対象に、植物防疫法に基づく緊急防除による移動規制(来月中旬から2017年3月まで)を行う▽特に寄主のおそれがあるものは廃棄を行う必要がある―との見解が示された。
説明にあたった同省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は、①トラップ密度の増強②果実の寄生状況調査③野生寄主植物等の把握④有人ヘリコプターによるテックス板散布⑤侵入ルートとなり得る道路等へのテックス板設置―といった対策により、「1年を前提に根絶したい」と述べた。
早期根絶は、農業経営の生命線である島外出荷を絶たれる農家にとって切望するものだ。そのためにも根を断つ取り組みの徹底を求める声が説明会で挙がった。「早期根絶が一番。寄生作物の除去をすぐに取り組んでほしい。過去の規制時に比べ現在はタンカンの生産量が多いだけに、早期に果実を廃棄(廃棄果実に農薬を散布し、市町村指定箇所の土中に埋却する方法)する必要がある」と訴えた平井孝宜さんは、「島内消費や加工用は廃棄の対象にならないとされているが、こうした需要用に果実が残ると幼虫が寄生し、まん延の原因になるのではないか。全量廃棄すべきだ。国は線引き(規制対象と対象外)をしているが、私たち農家は生活がかかっている。早期に産地が一丸となった駆除対策こそ推進すべき」。
足並みをそろえての駆除対策には農家だけでなく流通関係者からも賛同意見があった。名瀬中央青果㈱の福山治社長は「島内流通を認めることは早期根絶に支障が出ないか。規制が始まったら、どこにも移動させないくらいの対策を講じないと根絶できない」。
こうした声に対し島田課長は「植物防疫法により移動禁止区域内で行われる移動(奄美大島なら島内)にまで廃棄を強制できない。しかし根絶を徹底するため全量廃棄が必要というなら、ありがたい話であり、廃棄への協力をぜひお願いしたい」と述べた。
この全量廃棄(廃棄処分された農作物は買い上げの形で生産補償)については加工業者から異論が出たものの、早期根絶のためにどの方法がベストか、最も影響が大きいタンカン生産農家などの意見を参考に国は見解を示すべきだ。地元市町村の首長からも早期根絶へ全量廃棄の必要性が挙がっている。統一方法で産地一丸となった取り組みこそ、その先に規制期間の短縮がある。
(徳島一蔵)