国文祭・奄美パークでシンポ

県奄美パークで行われた国民文化祭・かごしま2015シンポジウム「自然遺産と『しま』の生活文化~わきゃしまぬ宝を世界へ~」

「千年先も幸福暮らせる島へ」
言語や歴史などから奄美再認識

第30回国民文化祭・かごしま2015シンポジウム「自然遺産と『しま』の生活文化~わきゃしまぬ宝を世界へ~」が13日、奄美市笠利町の県奄美パークであった。同パークの宮崎緑園長による講演や、4人のパネリストによるパネルディスカッションを実施。自然環境を中心に言語や歴史、現在の生活などあらゆる視点から奄美を再認識し、「奄美の宝」とは何か、これから大切にすべきことはどのようなことなのかを探った。

シンポジウムは奄美高校郷土芸能部「てぃだぬくわ」によるオープニングアトラクションで開演すると、宮崎園長が「人類の宝・奄美を語る」をテーマに講演。「奄美は自然と大島紬などの伝統工芸、島唄などの文化が一体化し循環している島。鹿児島県自体、亜熱帯から亜寒帯まであるとても貴重な地域」などと語った。

パネルディスカッションでは宮崎園長がコーディネーターを務め、小野寺浩さん(屋久島環境文化財団理事長)、中山清美さん(元奄美博物館長)、木部暢子さん(国立国語研究所副所長)、美延睦美さん(NPO法人徳之島虹の会事務局)の4人がパネリストとして登壇。小野寺さんが自然環境、中山さんが高校生による聞き書き調査などシマ遺産に関する取り組み、木部さんは奄美の方言を中心に自然と言語の関わりについてそれぞれ説明。美延さんは同NPOの取り組みを交えて徳之島を紹介した。

シンポジウムでは「人間とアマミノクロウサギ、どちらが大事か」という話題もあり、「大事なのは人。でも、クロウサギのすめないような環境に人は住むことができない」「難しい問題。ただ、人間のおごり高ぶりが地球環境を悪化させた。どうやって野生生物と折り合いをつけていくかということでは」などの様々な意見があった。

世界自然遺産登録について「人はおいしい空気と水、清らかな大地がないと生きていけない。たとえ登録があってもなくても、千年先の未来で子どもや孫が幸福な時を暮らせているか、そのために自然保護を考えていきたい」と美延さん。中山さんや木部さんは若い世代の活躍が重要とし、「遺産登録は一つの象徴。奄美を見直す大事なタイミングとして、若い人、お年寄りひっくるめて考えてほしい」(木部さん)「シマ遺産をどう活用していくかが課題。今後、北高で実施している高校生の聞き書き調査を、奄美全体の高校生に広げていきたい」(中山さん)などと語った。

小野寺さんは「新しい発想で自然との共生を考えていこう。そのためにも、島の人の意識と自信は大事。奄美が持っている潜在的な文化の力を基礎に、奄美モデルを作り上げてほしい」と呼びかけた。