確実根絶と再生産支援を

奄振に関する要望と併せ、奄美群島市町村長会・市町村議会議長会とJAあまみが、それぞれミカンコミバエ種群の対応を求める要望書を森山農水相に手渡した

森山農水相 「責任持って対応する」
市町村長会・議長会、JAあまみ中央要望

 【東京】奄美群島市町村町会(会長・大久保明伊仙町長)と奄美群島市町村議会議長会(安和弘瀬戸内町議会議長)は19日、来年度予算確保に向けた中央要望「奄美群島振興開発の推進に関する要望」に併せ、農水省に対して喫緊の課題となっている「重要病害虫ミカンコミバエ種群防除へ向けての適切な対応」を求める要請活動を行った。森山裕農水相への要望には生産者を代表してJAあまみ(上岡重満組合長)も参加。ミバエ種群によって様々な影響が及ぶ農業経営体と生産環境の維持のため、早急な対策と支援を強く求めると、森山農水相は「責任を持って対応する」と地元への理解を示した。

要望内容は、「防除」に関し①ミカンコミバエのまん延防止と早期根絶に向けた万全な対策の早急な実施②根絶後の再侵入、まん延防止に向けた対策――と、①②それぞれに要する人員体制や予算の確保等最大限必要な措置を求めたほか、「補償等」に関し③移動制限の対象植物で廃棄措置命令を受けた果実類(タンカン、ポンカン、スモモ、マンゴー、パッションフルーツ等)・果菜類(トマト、ピーマン等)については、生産農家等に対して適正価格による全量買取など十分な損失補償の対策④島内まん延未然防止のため、移動禁止区域外で生産された移動制限対象の果実類・果菜類についても、農家からの申し出があった場合に廃棄命令を受けたとみなす特例措置の設置⑤生産農家等への損失補償は、移動規制解除後も島内需要・島外需要が一定程度回復するまでの期間とし、併せて将来展望が見通せる再生産可能な支援対策――を講じる。また、「その他支援等」に関し⑥経済的な損失が見込まれる移動制限対象の果実類・果菜類を取り扱う加工業者や流通業者等への支援対策⑦風評被害による奄美農産物の価格下落等が生じないようにする支援対策⑧ミカンコミバエの誘引状況や根絶に向けた取り組み等の実施概要、移動制限対象の果実類・果菜類の廃棄方法等の必要な情報を県・地元自治体と連携し、間断なく、きめ細やかに住民に広報する――の8点。

JAあまみからは「重要病害虫ミカンコミバエ防除対策及び移動規制に伴う適正な農家補償措置に関する要望」として、市町村長会の内容を生産者寄りの視点で一部変更し、防除については「高品質な果樹生産のために標高100㍍を超える山間部で作られる柑橘類が多く、山間部に野生寄生種も多く存在する」として「航空防除での範囲の拡大」や、既に収穫期に入っている対象作物の早急な対応策等を盛り込んだ。

また、要望書には過去にミバエ種群根絶によって、1978年度奄美大島での果樹農業産出額2億3600万円から、2012年度には7億4千万円に拡大していること、中でもタンカン生産額は3800万円から4億1800万円と約11倍まで拡大し、ブランド価値向上などで奄美を代表する農作物として育ててきた歴史などを列挙。ミバエ種群確認によって今後の雇用創出やブランド崩壊、奄美群島全体の農業分野への不安が暗い影を落としているとし、近隣地域への拡大を未然に防ぎ、確実な根絶と、根絶後も再生産を可能とする農業経営体及び生産環境維持が必要だと訴えている。

森山農水相を訪れた一行は、現状説明と一刻も早い対策と、今後の補償などについて要望。森山農水相は「国が主体的に対応することが大事。テックス板は奄美大島に12万枚以上まこうとしており、4万枚は消化できた。徳之島の状況も承知している。同じような対応をさせてもらう」としたほか、補償については「農家や農業団体の意見を聞かせてもらい協議の上でやっていきたい」。またミバエ種群が確認されたところから半径5㌔㍍で移動禁止となるが、区域外についても補償対応などが要望されていることについては「検討する」としたものの「規制対象にならない区域を入れると、段々と解除になっていくときに足かせにならないか考えておくことも大事」と熟慮・再考を求める場面もあった。「短期間でやらないと意味がない。来年度のマンゴーの季節までには、なんとかできれば」と早期収束に意欲を示し「原料となる果実がなくなることでジュースなど加工品の原料もなくなる。融資の窓口の対応もさせたい。必要な人員と予算確保については、農水省が責任を持って対応する。安心してほしい」と力強く語った。

金子衆院議員と意見交換会も

JAあまみ

 同日、JAあまみは森山農水相への要望に先立ち、衆議院第2議員会館会議室で金子万寿夫衆院議員や県の担当者らとミカンコミバエ防除について意見交換会を行った。

その中で放置された農園について金子議員は「それぞれの地域のことは地域の人が一番よくわかっている。どこが捨てられた農園なのか情報交換しないといけない」などとして、早期収束に向けきめ細かな情報収集に協力していくことを確認。

意見交換会、要望活動後、JAあまみ大島事業本部の岡山俊一果樹部会長は「若手の農家が出ている中で再生産可能な生産補償が必要。半年ほどで早期収束を願っている」としたほか、平井孝宜奄美市果樹部会長は「出荷できると思っていた果実が4日の移動禁止令で出荷できなくなり、生産者は困惑している。全面協力をもらえるということで、一作でも早く奄美の果実を全国に届けられるよう、協力してやっていきたい」などと話し、国、県、地元自治体などとともに、ミバエ種群根絶にむけた取り組みに尽力する考えを示した。