航空防除の範囲

テックス板の空中散布はヘリコプターによって進められている

標高100㍍超の果樹園にも
「現場重視で柔軟対応」

重要病害虫ミカンコミバエの奄美大島への再侵入で、緊急防除ではヘリコプターを使った航空防除も行われている。テックス板(木材繊維板)の空中散布は標高100㍍以下からの投下が示されたが、山間部にはこの高さを超える果樹園が存在することから、農林水産省はこうした果樹園も対象にするよう指示している。

ミカンコミバエの根絶方法ではオス成虫の誘殺を採用。誘引物質として植物の丁子=ちょうじ=(フトモモ科の常緑高木)由来のメチルオイゲノールに、殺虫剤も混ぜた誘殺テックス板が投入されている。

同省消費・安全局植物防疫課によると、ヘリによる防除で100㍍以下としたのはミカンコミバエが好んで生息する範囲のため。空中散布は今月16日から開始されたが、この際も上空30~50㍍の高さからテックス板をまくとされた。この判断についてタンカン生産農家は「高品質な果樹生産のために標高100㍍を超える山間部で作られる柑橘類の方が多い。こうした山間部にはミカンコミバエの寄主植物も多く存在する」として航空防除での範囲拡大を求めている。

果樹農業が盛んな大和村では、タンカン栽培は福本地区を中心に行われている。盆地特有の寒暖の差の激しさが高品質のタンカンを生み出しており、果樹園は標高200~300㍍部分に主に存在。農家は「福本で栽培すると糖度が高くクエン酸も残り、濃厚な味のタンカンができる。また外観の紅乗りもいい。平場よりも山間部の方が適地」と話す。

奄美大島でのタンカン栽培の実態を受けて植物防疫課の島田和彦課長は「われわれは結果責任が問われる立場。なんとしても早期根絶しなければならない。防除では効果的な方法を実行する必要があり現場重視で対応している。航空防除でも100㍍を超える高さで果樹園を見かけた場合、人の手でテックス板をまけない所では周辺に空中散布するよう指示しており、実行されている」と説明する。

テックス板の空中散布は19日までに6万4千枚余りを終了。計画では奄美大島に12万枚以上まく方針だ。また地上でもテックス板設置箇所の増強や、これまで設置されたものの更新も行われている。

島民の中には、ミカンコミバエ防除は果樹園など経済園だけで対策が進められているという受け止めがある。寄主植物は山間部にも多いだけに、防除対策取り組みの周知も求められそうだ。