加工業も全量廃棄理解

対象品目を使用して製造されている加工品。全量廃棄となれば、いずれ陳列棚から商品はなくなる

代替商品開発課題も
「農家あっての直売所」

奄美大島でのミカンコミバエの急増に伴い、植物防疫法に基づく移動規制を来月13日に控えるが、影響は生産農家だけではなく、流通や加工にも及ぶとみられている。間もなく規制対象となるポンカンやタンカン農家に対し、生産農家やJAなどでつくる協議会は今後、果実の全量廃棄に向け対象農家への説明会を実施する方針だが、将来を見据えて一日も早い根絶に向けた確実な全量廃棄の実施を願う加工業者の声もある。

奄美市住用町の特産品直売所「サン奄美」(師玉洋子代表)では、タンカンなど移動規制の対象品目を材料とした加工商品を約20点製造・販売する。中でも主力のタンカンは年間約5㌧を仕入れ、ジュースやゼリー、ジャム、お菓子など10数種類の商品を製造。青果販売も請け負っており、師玉代表は「全量廃棄となれば死活問題。経営が継続できるか不安」と頭を抱える。

現在の商品は前期産のタンカンの在庫で製造しているが、残りわずかの状態。同社では間もなく予約が始まる冬のふるさと便だけでなく、夏のふるさと便でもタンカンの加工商品を詰め合わせて販売している。「原料が確保できなければ、商品が作れない。生活研究グループのネットワークを活用し、その時期の売れ筋商品を代替として対応するしかない」と肩を落とす。

直売所には収穫時期に入ったポンカンを持ちこむ生産農家もいるという。師玉代表は「ミバエ問題は消費者にも浸透しており、従来と比べて販売速度が鈍く、店舗内で腐ることでミバエがまん延する懸念がある。すでに奄美大島にはミバエが存在するのに、なぜ移動規制は来月なのか。今すぐ規制をかけるべき」と訴える。

「全量廃棄は経営上厳しいが、いつまでに根絶できるという見通しがあれば納得できる」と師玉代表。確実な根絶に向け、「庭先のミカン一つまで全て廃棄しなければ意味がない。高齢農家などのためにも、集落単位で説明会を実施し、協力体制を築いてほしい」と話した。

同市笠利町の女性起業グループ「味の郷 かさり」(吉田茂子代表)も、タンカンやパッションフルーツなど対象品目を使用した加工品10数点を製造する。吉田代表は「タンカンを待っている人はいる。販売したいのは本音」と前置きした上で、「影響が長引いて仮に離農が進めば、直売所も終わり。直売所は農家がいて初めて成り立つ。農家が全量廃棄するのであれば賛同する」と理解を示す。

一方で、「本当に根絶を目指すのであれば、島外出荷を認めず、島内流通や自家消費、加工品の出荷は認めるといった島内で対応が変わる制度はおかしい。制限区域にとらわれず、一律で禁止すべき」と苦言を呈した。

現実的な問題として、対象品目を使用した加工品に変わる新商品開発が課題に上がる。「このままでは、いずれ棚に商品がなくなる。様々な果樹が対象品目になっており、今後の生産農家の対応次第で、新商品のベースとなる原料も変わってくる。従業員も抱えており、知恵を出さないといけない」と語った。

19日に行われた中央要望で、森山裕農水相が言及した加工業者への支援策については、「融資は結局のところ借金。損失補てんをしても、影響が長引けば経営は苦しくなる一方。それよりも早期根絶に力を入れ、少しでも早く待っている人に対象品目を届けられるようにしてほしい」と前を向いた。
(且 慎也)