【鹿児島】「オール鹿児島」で県全体のレベルアップを目指そう――。今年度の県中学野球指導者研修会が28日、鹿児島市の長田中であった。奄美からも多数の中学野球指導者が参加し、見聞を広めた。
研修会は県中体連の軟式野球専門部主催で毎年この時期に実施しており、今年で7回目になる。県のチームが九州大会でなかなか勝てず、全国大会に出場できないことに危機感を感じ、県全体のレベルアップを目指して始まった。05年度は6158人だった野球部員数も、今年度は3350人。少子化、野球離れなどで部員数の減少も著しい。野球の魅力をどう子供たちに伝えていくかを考えるのも、研修会の重要なテーマだった。
「最初は2、30人の参加だった」(村山忠隆専門部長)だったが、今年は約160人が参加。県内はもとより、宮崎や福岡、長崎などからも参加者があった。
午前中は、フィジカルパフォーマンス代表の塚原謙太郎氏によるトレーニング計画の立て方や「運動脳」の鍛え方に関する講習会。塚原氏は、近年甲子園でも実績を残す健大高崎(群馬)などでトレーニングコーチを務め、シナプソロジーを活用した独自のトレーニング方法を提唱している。
「シナプソロジー」とは「2つのことを同時に行う」「左右で違う動きをする」といった普段慣れない動きで脳を適度に混乱させ、効果的な刺激を与えることで、脳の機能を高めること。例えば、右手を上げたら右、左手を上げたら左に動くと基本動作を決める。慣れてきたら、逆の動きをしてみたり、指示を手からカラーボールに変えるなど、徐々に難度を上げていく。脳が混乱した状態でも、正確に速く動けるようになることで、緊迫した場面でも冷静に判断してミスなくプレーできるようになるためのトレーニングだ。
「単に脳を鍛えるのではなく、判断する脳と、動ける身体を作る。まずは『運動脳』を鍛えることが大事」と塚原氏。知名中の粟ケ窪英樹監督は「離島の子は試合経験の不足があるけど、こういったトレーニングがそれを補えるのではないか」と期待する。「タイムリーな話題で勉強になった」と古仁屋中の平山孝幸監督。チームでも走塁の強化など新たな取り組みを始めたところで指導の「引き出し」が広がった。「奄美にも持ち帰って、地区全体のレベルアップに役立てたい」と感想を話していた。
午後は宮崎・土々呂中野球部顧問の有田勝則氏による「私の考える中学野球」の講演と実技指導だった。
(政純一郎)