「早期廃棄命令を」

奄美市が行ったミカンコミバエ緊急防除にかかわる説明会。果樹専業農家からは早期の廃棄命令が要望された

タンカン農家要望 加工用確保で国慎重
奄美市住民説明会

果実や果菜類の重病病害虫ミカンコミバエの奄美大島への侵入で、同島内5市町村の果実・果菜類への移動規制(島外出荷規制)が13日から始まるのを前に、奄美市は6日、名瀬・住用・笠利地区の7会場で一斉に住民説明会を開いた。浦上地域など大規模栽培している果樹専業農家が多い上方地区の説明会では、タンカン農家から早期根絶のためにも「早期廃棄命令」を求める要望が相次いだ。

奄美市では住民が参加しやすいよう日曜日に開催。上方地区は浦上公民館が会場になり約60人の住民が参加。行政側は主催した市農林振興課のほか、県大島支庁農政普及課、国からは農林水産省消費・安全局植物防疫課の担当職員も説明に加わった。

説明会ではまず農水省が参加者に対し、ミカンコミバエ誘殺数の急増など「情報提供で不備があったことをおわびする」と陳謝した上で、「緊急防除省令に基づく移動規制が一刻も早く解除できるよう、この冬の防除対策が何よりも重要」と述べた。

移動禁止区域内の作物の中で最も年生産額が大きいのが4億円超のタンカン。このうち半分は奄美市の生産額で、同市の作付面積のうち名瀬地区が約90㌶と全体の7割以上を占める。山間部の造成団地に果樹園を所有する大規模農家が多い名瀬地区が奄美のタンカンの代表産地だが、市農林振興課が名瀬地区を中心とした防除対策を説明。それによると誘殺(オス成虫)用のテックス板は週明けから住用・笠利を含む3地区一斉に設置に入り、12月末までに8700枚予定。奄美大島全体では約2万4200枚を計画している。

ミカンコミバエの活動が活発になる春先に向けては2~3月に再び現在の倍以上のテックス板を設置する方針。また、テックス板の空中散布の方は11月末までに約12万2千枚がまかれ年内分は終了したが、空中散布も同様の時期に11月の倍の枚数をまく計画で、状況によっては1月に前倒しすることもあるという。

説明会では県が決定したポンカン・タンカンの買い上げ単価、果実の廃棄手続きなどが説明された。廃棄果実の処理・買い上げに当たっては、生産者などは市町村に▽印鑑▽売上明細書▽通帳写し▽収穫前・後の樹園写真―を提出しなければならない。廃棄場所も各市町村が指定地を確保しており、最も量が多い奄美市は朝戸地区の選果場横の市有地(約1㌶)を充てている。

果実などの廃棄処理は、植物防疫官による廃棄命令が前提。これに対しタンカン農家からは「一年間頑張って育ててきただけに、捨てる果実を毎日眺めるのは農家として忍びない。一日でも早く廃棄命令を出し、年内で果実を廃棄できるようにしてほしい。移動規制外の加工品を扱う業者も『一年我慢すれば乗り越えられる』として加工用に残さなくてもいいとしており、廃棄処分の徹底を」「年内でも収穫に入り、1月で終わらせないと樹勢に影響する。売れないものを作ってもしょうがないだけに、早期に廃棄命令を」との要望が挙がった。

廃棄命令を出す側の農水省は「島内での移動(加工用や自家用消費、島内販売用として)は自由であり、法律上規制できない。廃棄果実買い上げによる補償は農家のみで、加工業者や小売業者は島内流通分もなくなれば収入を失うことになる。島内流通量は少なく、ミカンコミバエの果実への寄生に気づきやすいことから感染源にはならない」として加工用なども含めた廃棄には法律面の問題もあり、慎重な考えを示した。

加工用確保など島内流通は規制できないが、一方で早期根絶へ全量廃棄を目指す機運が高まっている。農水省は「(廃棄命令を受けて)一日でも早く収穫し処分したいという地元の声は理解した。加工用確保への対応を含めて判断していきたい」とした。