『奄美のノネコ問題』

奄美市で行われた「奄美国際ノネコ・シンポジウム」

地域での管理課題
住民目線で考える 国際シンポで意見交換

奄美の明日を考える「奄美国際ノネコ・シンポジウム」(鹿児島大学鹿児島環境学研究会主催)が6日、奄美市名瀬の奄美観光ホテルであった。基調講演や研究報告、パネルディスカッションなどを実施。長年ネコ問題に取り組んできた地域住民の代表などが参加し、奄美のネコ問題について積極的に意見を交わした。

世界自然遺産登録を目指す奄美地域では現在、ノネコが引き起こす問題への対応が課題となっている。今回のシンポジウムでは地域住民の視点に立ち、ノネコ対策を含めたノラネコの扱い、ペットとしての正しいネコの飼い方などについて意見交換することが目的。

第1部では、大和村の環境省奄美野生生物保護センターから鈴木祥之上席自然保護官とニュージーランド保全管理研究所のアル・グレン博士が基調講演。鹿児島大学特任研究員(国際島嶼教育研究センター奄美分室)の鈴木真理子さんと同大准教授(鹿児島環境学研究会)の小栗有子さんがそれぞれの住民意識調査や同研究会の取り組みなどについて報告した。

グレン博士は実際にネコの駆除に取り組むニュージーランドでの事例から、「ネコを駆除すると希少種の回復など生態系に劇的な効果をもたらす。一方で、ネコを駆除したことで(外来種の)ネズミが増殖し、生態系が崩れるなどの事態もあったので、地域ごとに注意しなければならない」と説明。今後奄美では▽島の大きさ▽地形▽法的、社会的な問題(安全性や地域社会からの受容)―などがノネコ問題への課題になると語った。

第2部では星野一昭さん(鹿児島大学特任教授)がコーディネーターを務め、久野優子さん(奄美猫部部長)、阿部優子さん(奄美哺乳類研究会代表)、深田小次郎さん(しーま代表)、久保俊太郎君(大島高校生物クラブ)、村松健さん(ピアニスト・作曲家)の6人でパネルディスカッションを実施。①ノネコ問題に関する地域の現状②情報共有の在り方③ネコ問題とこれからの奄美―をテーマに意見を交わした。

飼いネコもノラネコも、山裾で放し飼いになっているネコは山に行く可能性があるとした上で、「奄美には600~1200頭のノネコ、そして9000匹ほどのノラネコがいるとされている。里親を探すにしても時間はあるのか、しっかり考えて対策してほしい」と、県や市町村、関係機関へ要望も。

久野さんは「市町村でTNRに取り組んでいるが、その後の管理までは行き届いていない。ノラネコの数、個体など地域で100%管理できるようにしなければならないのでは」と指摘。深田さんから写真などを使って地域のネコを管理する「ネコアプリ」の提案もあった。

高校生の立場から語った久保君は「(国際島嶼教育研究センター奄美分室の)アンケート調査に参加したとき、ネコが嫌いという人の意見を目の当たりにした。ネコも人も一緒に暮らせる島になってほしい。そのためにも、ネコ問題について考える環境づくりから取り組んでいきたい」と話した。

それぞれの意見を聞いたグレン博士も「ネコを管理するのは複雑。みんなで考えることが大切になる。色々な種が絶滅してしまったニュージーランドと同じことが奄美では起きてほしくない」と語った。

この日は龍郷町大勝小5年生20人が制作した絵本『ネコはお外にいていいの?』の配布もあった。