タンカンも早期廃棄要望

黄色く着色し始めているタンカン。生産農家からは「早期廃棄命令」を求める声が強い

手もぎ「摘果の延長」 農水省「地元意向は把握」
廃棄活動、全体的取組み提案

奄美大島へのミカンコミバエ侵入に伴う緊急防除で移動規制(島外出荷規制)が13日からスタートするが、14日から廃棄処理が始まるポンカンに続き、タンカンも早期廃棄を求める声が生産農家から出ている。農林水産省も地元の意向を把握しているものの、収穫期を迎えているポンカンとの事情の異なりもあり結論は出ていない。

奄美大島の果樹の生産量をみると、2012年度統計では全体で1850㌧。このうち柑橘=かんきつ=類はタンカンが果樹全体の6割強の1162㌧を占め、ポンカンは192㌧にとどまっている。現在の状況でもタンカンは1千㌧超、年々減少しているポンカンは150㌧にとどまり、生産量で7倍の差がある。

今回の緊急防除による特定移動制限区域(奄美市笠利町の一部を除く奄美大島のほぼ全域と加計呂麻、請島、与路島)では、寄主植物(移動制限植物)の島外への移動が禁止される。この区域内で生産された移動制限植物は廃棄しなければならないが、廃棄対象果実のうちポンカン、タンカンについては廃棄に伴う買い上げ単価(生産補償)が決定している。

廃棄の手順は、特定移動制限区域の設定→廃棄打ち合わせ→検量→廃棄命令書の交付→買い上げ契約→買い上げ額支払―という流れ。植物防疫官の廃棄命令を受けて実施されるが、来週から廃棄が始まるポンカンに続き、タンカンも年内での廃棄命令を生産農家は要望。大規模な果樹専業農家が多い奄美市名瀬の浦上地区で開かれた住民説明会では「一年間頑張って育ててきただけに、捨てる果実を毎日眺めるのは農家としてしのびない。一日でも早く廃棄命令を出し、年内で果実を廃棄できるようにしてほしい」「青取りを年内で始め、1月で終わらせないと樹勢に影響する。早期に廃棄命令を」などが挙がった。

同市住用町の果樹専業農家、元井孝信さんも同意見。「2月の収穫期に入るとハサミを使い、作業員も雇用し果実を収穫しなければならない。労賃の負担も必要。標高が高い果樹園ではタンカンは四分着色もみられるが、青取り段階なら手もぎで対応できる。手もぎなら摘果の延長として農家は臨め、来年に向けて樹を元気にすることができる。温州ミカンの産地では12月で収穫し、安定生産へ樹勢を回復させている」と指摘する。手もぎなら作業員の数も抑制できるという。

奄美市では廃棄に備えて農家が収穫したポンカンが選果場内に置かれている。元井さんは「ポンカンの廃棄が進めば、タンカンのスペースを確保できる。農家の責任で事前対応させてほしい」と訴える。

これに対し同省消費・安全局植物防疫課は「タンカンも早期に廃棄したいという地元の意向は把握している。前向きに検討したいが、まずはポンカンから進めていきたい。ポンカンの場合、既に収穫期に入り果実の落下もみられるという事情がある。タンカンは収穫期を迎えていない。年内で廃棄命令を出せるか、出せないか決定したい」と説明。タンカンは生産量でポンカンを大幅に上回るだけに、検量や事務手続きなど市町村が行う作業に備えた体制づくりも課題になりそう。

また、果実の廃棄にあたっては自主廃棄が困難な高齢農家や放任園の問題がある。農家からは「スムーズに作業を進めるためにも全体的な取り組みが必要。一部でも春先まで果実が残ると、そこが感染源になりミカンコミバエ根絶を妨げる要因になる。農家で組織する部会活動として全体的な廃棄活動(自主廃棄できない箇所は部会で対応しカバー)を認めてほしい」との提案がある。部会活動を進めるにあたっては当然予算の裏付けが必要だけに、国による支援措置が求められそうだ。

 (徳島一蔵)