次々と廃棄されるポンカン
ミカンコミバエ侵入に伴い13日から島外移動制限がスタートした奄美大島。14日には奄美市と瀬戸内町の2市町でポンカンの廃棄作業が行われた。島内では年間約100㌧のポンカンが生産されている。廃棄作業を行った2市町では14日現在で約70㌧(14日までに持ち込まれた分)のポンカンを廃棄予定。残る大和村、宇検村、龍郷町でも順次廃棄作業を進めるとしており、県では年内の廃棄を目標に掲げている。
移動制限区域では、対象品目ごとに設定された移動制限基準日以降、誘殺が確認された地域から半径5㌔以内にある対象品目の島外出荷(規制期間・13日から2017年3月31日まで)が禁止される。区域内で生産された果実などは自家消費や島内流通、加工品用を除き、植物防疫官が廃棄命令を行う。その廃棄分は、県が全量買い上げ廃棄されることとなる。今回廃棄対象となっているのはポンカン。廃棄命令書は14日付で門司植物防疫所名瀬支所から各市町村に交付しており、廃棄作業は各市町村で行う。
奄美市では集荷計量場所となる奄美大島選果場横の市有地に廃棄場所を設置。廃棄は約1㍍以上の土をかぶせる必要があるため、約3㍍の深さに掘った穴を準備して行われた。初日の作業には植物防疫所や大島支庁、同市の職員らも参加し、市内の農家が持ち寄ったポンカンの廃棄作業を見守った。一方、同作業の傍らでは、この日も農家によってコンテナやごみ袋に入れたタンカンが同選果場に運ばれ、計量する姿が見られた。
20年ほど住用町でポンカンとタンカンを生産しているという中島シズエさん(74)は5回目の計量のため14日も同選果場を訪れた。廃棄が始まったことについて、「ここまで育ててきたのに捨てることになるのは情けない。国が決めたことだから仕方がないけれど。ポンカンよりも(これから廃棄予定の)タンカンの方が量は多い。運んでくるのはもっと大変かもしれない」と語った。
奄美市農林振興課の大海昌平課長は「やっと廃棄が始まった。農家のみなさんは残念に思いながらも、来年は生産できるようにと前向きにとらえてくれているようだ。地元としても早めの根絶を願いたい」と説明。一方、自身も生産者の一人として「本来なら人の口に入るものが、こうして捨てられるのはあまりいい思いはしない。早めに(廃棄を)済ませたい」と話した。
廃棄作業は宇検村と龍郷町が15日に実施。大和村は14日から集荷を始めているが、「初日はそこまで集まらなかった。数量が集まり次第実施する」としている。