エディンバラ公フィリップ殿下からの代筆手紙を受け取った浜田さん(15日、県大島支庁)
1984年に奄美大島を訪れ、自然環境の視察などを行った英国王室エディンバラ公フィリップ殿下(94)宛てに、写真家の浜田太さん(62)がアマミノクロウサギの生態の映像が収められたDVDなどと同封した手紙を送ったところ、このほど代筆のお礼状が届いた。15日、県大島支庁で記者会見した浜田さんは「自分が30年やってきたことが間違っていなかった。とても勇気づけられた」などと喜びを語った。
今から31年前の当時、自然保護活動などを行う国際的NGO団体、世界自然保護基金・WWF(World Wide Fund For Natureの略称※1986年まではWorld Wildlife Fund)の総裁として活動していたフィリップ殿下が同年10月13・14日に、奄美大島に来島。南西諸島の自然調査、保護活動などが目的だったという。
その際に、アマミノクロウサギなど固有の希少動物の観察や、マングローブを視察。当時の記者会見でフィリップ殿下は「素晴らしい自然が残っている。これは何としてでも守らなければならない。生息地の保護こそ全てである。動植物を殺すなとか採るなとか言うだけでは自然保護とは言えない」(WWFジャパン20年史から)―などと指摘。以後、島内でも「奄美の自然を理解し大切にしなければ」という機運が高まる一つのきっかけになったことを多くの関係者が認めているという。
1986年から浜田さんは当時、まだ生態などほとんどが謎に包まれていたアマミノクロウサギの生態研究を開始。96年には世界で初めて誰も見たことがなかった子育て等の撮影に成功し、現在も生態解明の研究を続けている。
2003年、奄美琉球の世界自然遺産候補地のリストアップについて、「フィリップ殿下の視察が大きな影響を及ぼし、登録に向けた第一歩だった」と浜田さんは振り返り、「奄美に住む人間として、誇りと希望を与えてくれた」。フィリップ殿下の一連の活動に対する感謝を伝えようと、10月30日に写真集や絵本、07、10年にテレビで放映されたクロウサギの関連番組をまとめたDVDなども合せて送ったという。
当時の視察に一緒に同行していた義従弟のBrian Mcgrath男爵が、フィリップ殿下の言葉を代筆。手紙には映像を見て、視察時に確認できたクロウサギや島で受けたおもてなしなど、はっきりした記憶として同男爵と振り返りながら、寄贈に対する感謝と浜田さんへ健闘を期待する思いなどが記されており、11月15日に浜田さんの手元に届いた。
浜田さんは今回のお礼状について、「山の中で一人こもると惨めな気持ちになることもあった。大きな励みになった。こういった活動は孤独との戦い。今後の心のよりどころになる」など感謝の気持ちを語った。