ミカンコミバエ 誘殺ゼロも警戒続く

ミカンコミバエの発生状況を確認するため設置されている捕獲用のトラップ

ミカンコミバエの「好適寄主植物」のスモモ。冬場の防除が大切だ

「取り残し果実リスク」「中に幼虫」

農林水産省植物防疫所が発表したミカンコミバエ種群の誘殺状況で、緊急防除区域の奄美大島(加計呂麻・請・与路島含む)では最新の1週間(12月8~14日)の誘殺数がゼロとなったが、関係機関は引き続き警戒している。誘殺されているのはオスのみでメスの駆除も必要なことから「寄主果実の取り残しはリスクになる」として除去の徹底を呼び掛けている。

奄美群島における誘殺数の累計(9月1日以降)は緊急防除区域の奄美大島が857匹、区域外27匹。誘殺状況は1週間の推移で発表されているが、奄美大島でゼロとなったのは今回が初めて。発生状況の的確な把握のため、ミカンコミバエ捕獲用のトラップは奄美大島には約380基設置されてある。

気温が低下する冬場はミカンコミバエの行動が緩慢になる。誘殺数がゼロになった中、住民のなかには「根絶されたのではないか」との受け止めが行政機関に寄せられている。市町村の担当者は「誘殺はあくまでもオスであり、メスの駆除にも取り組まなければならない。決して油断できない。ポンカンだけでなく収穫期を迎えている在来柑橘=かんきつ=類など寄主果実の徹底した除去が必要。住民の理解のもと全力をあげたい」と語る。ミカンコミバエの幼虫が確認された果実もあったという。

農林水産省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は「気温が上昇する2月後半から3月にかけての誘殺状況が今後のポイントになる。現在の時期はテックス板設置による防除や、メスのミカンコミバエの産卵の可能性がある寄主果実の取り残しがないよう、各市町村が住民と連携し対策を進めてほしい」と指摘する。

奄美大島が対象となっている緊急防除の解除は「ミカンコミバエ種群の誘殺が三世代相当の期間確認されなかった市町村については、有識者の意見も踏まえた上で、緊急防除の解除を判断する」としている。同省によると、気温が高い夏場は1カ月で1世代繰り返すとされており、三世代相当は夏期なら4カ月程度になる。根絶は温度上昇時期の誘殺状況が目安になりそう。

ポンカン、タンカンに続き、来年2月22日にはスモモの移動制限基準日を迎える。スモモはミカンコミバエの「好適寄主植物」とされており、島田課長は「基準日から5月の収穫期の間で、どれだけコントロールできるかが重要。特に冬場はコントロールしやすいだけに、スモモの防除では放置園も含めた対策のほか、誘殺が確認された地域から半径5㌔以内が特定移動制限区域(島外出荷禁止)に指定されることから、周辺の市町村の協力も欠かせない」としている。なお、県内一のスモモの産地となっている大和村では防除対策としてテックス板(誘引剤と殺虫剤を染み込ませた誘殺板)を1708枚設置している。