奄美への侵入経路 遺伝子解析でも特定できず

ミカンコミバエの奄美大島への侵入経路は特定されていない
(成虫=農林水産省植物防疫所ホームページより)

台湾産ポンカン輸出停止
ミカンコミバエの幼虫発見で

台湾やフィリピンなどではミカンコミバエ種群が発生しているため、日本は果実・果菜類の輸出前に処理を求めているが、昨年末、台湾産ポンカンの輸入検査で幼虫が発見されたことから、輸出停止を要請するとともに、輸入検査を中止している。同様に発生が確認され緊急防除区域となっている奄美大島への侵入経路については、遺伝子解析でも特定できていない状況だ。

農林水産省消費・安全局植物防疫課によると、昨年12月、東京港で行われた台湾産ポンカンの輸入検査で、生きたミバエ科の幼虫が発見されたもの。これを受けて同省はすぐに台湾側に、台湾産ポンカンの輸出の停止を要請。さらに日本に輸入される台湾産ポンカンの輸入検査を中止している。発見された幼虫は、ミカンコミバエと確認され、台湾の対応が十分と認められるまでの間、台湾産ポンカンの対日輸出は停止されるという。

ミカンコミバエの発生地域はタイ、マレーシア、台湾、中国、ハワイなど。主な寄主植物はナス属植物、柑橘=かんきつ=類、パパイア、マンゴー、マンゴスチン、トマト、ピーマンなど。輸出停止となっている台湾産ポンカンについては、輸出前に低温処理の実施を求めていた。同様にミカンコミバエが発生しているフィリピンは、柑橘類については日本向け輸出が禁止されており、マンゴーやパパイアは解禁されているものの蒸熱処理を日本側は求めている。

国が緊急防除に伴う省令を施行(昨年12月13日)したことで、ほぼ全域が島外に果実や果菜類を出荷できない移動制限区域となった奄美大島。ミカンコミバエは発生地域から強風で飛来したとみられており、瀬戸内町など島南部を中心に昨年6月から11月上旬までに大量の誘殺が確認された。奄美大島への侵入経路について農水省は、誘殺されたミカンコミバエの遺伝子解析や風紋解析を実施している。

同課の島田和彦課長は「奄美大島へのミカンコミバエ侵入は物流による持ち込みではなく、強風による飛来とみられているが、侵入経路は特定されていない。遺伝子解析でも台湾系、フィリピン系のミカンコミバエのほか、両方いる場合が多く難しさがある。風紋解析も偏西風の関係で中国からの侵入も考えられ、特定できず不明のまま」と説明する。

中国や東南アジアといった日本の周辺国では、ミカンコミバエ防除対策が十分に行われていないという専門家の見方もあり、侵入への警戒や監視体制、防除体制強化が常に求められそうだ。