今年4月1日から改正障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)が施行される。すべての企業が対象になり、雇用の分野で障がい者への差別を禁止するとともに、合理的配慮の提供が義務となるのが特徴。事業主は障がい者が働きやすい環境づくりに取り組まなければならない。
厚生労働省によると改正のポイントは、▽雇用の分野での障がい者差別禁止(障がい者であることを理由とした障がいのない人との不当な差別的取り扱いの禁止)▽雇用の分野での合理的配慮の提供義務▽相談体制の整備、苦情処理、紛争解決の援助―の3点。
対象となるのは、障がい者手帳所持者に限定されない。身体、知的、精神障がい(発達障がいを含む)その他の心身の機能に障がいがあるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な人が対象となる。
鹿児島労働局職業対策課では今回の改正法のポイントとして「合理的配慮の提供義務」を挙げる。合理的配慮は、募集・採用時で均等な機会を確保するための措置、採用後にいては均等な待遇の確保または障がい者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置を指す。
例として挙げているのが、募集・採用時は「視覚障がいがある人に対し、点字や音声などで採用試験」「聴覚・言語障がいがある人には、筆談などで面接」。採用後に関しては「肢体不自由がある人に対し、机の高さを調整することなど作業を可能にする工夫」「知的障がいがある人には、図などを活用した業務マニュアルを作成したり、業務指示は内容を明確にして一つずつ行ったりするなど作業手順を分かりやすく示す」「精神障がいがある人などに対し、出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮する」。
この合理的配慮について厚労省は、「『過重な負担』にならない範囲で事業主に講じていただくもの」と説明。①事業活動への影響の程度②実現困難度③費用負担の程度④企業の規模⑤企業の財務状況―などを総合的に勘案し、過重負担を個別に判断するという。
同局職業対策課によると、こうした改正法の内容を県内の企業に周知。昨年夏頃から名瀬職安など各ハローワークの窓口で事業主向けのリーフレットを配布しているほか、企業数が多い鹿児島市内では事業所向けの説明会を開催。約100社の参加があったという。また昨年末には商工会連合会など母体組織に傘下事業所への周知を要請。県内各市町村に対しは改正法の広報紙への掲載を働きかけている。
施行後は対応が不十分な場合、ハローワークが定期的に企業を訪問し指導するほか、事業主や働いている障がい者間で意見のそご(食い違い)がないか確認していく。
合理的配慮に伴う環境整備には費用がかかることから、障がい者雇用を控える企業が出てくることも想定されている。一般の民間企業(常用労働者50人以上規模)の場合、障がい者雇用で2・0%の法定雇用を定めている。未達成の企業は納付金(100~200人規模は月4万円、200人以上規模月5万円)を納めなければならない。厚労省では企業に対し、この法定雇用率の達成と改正法に伴う環境整備の両方の指導を強化していく方針だ。
なお奄美では、求人票を提出する企業に助成金制度なども活用した障がい者雇用を名瀬職安が働きかけているほか、あまみ障害者就業・生活支援センターと連携。センターでは就業支援担当者と生活支援担当者が協力して、就業・生活面の一体的な支援を行っている。