感染・救済の認知拡大課題

地道な相談の告知と関係機関による認知活動が感染者救済の鍵だ

B型肝炎訴訟
奄美から1人新たに提訴

 集団予防接種の注射器の使い回しによるウイルス感染者が国に損害賠償を求めているB型肝炎訴訟で、2012年に成立した感染者の救済を定めた特別措置法の期限が1年を切った。厚生労働省は期限延長と救済対象を拡充する改正案を今国会に提出する予定。奄美にも多く救済対象がいるとされるなか、同訴訟弁護団は少しでも早い相談を呼びかけ。救済の促進には関係機関の感染・救済手段の認知が課題となっている。

 提出される予定の改正案の特徴は「請求期限延長」と「支給対象の拡大」。成立すると、17年1月12日までだった公訴期限が22年1月12日まで延長。また、発症後20年経過で請求ができなくなっていた肝がん、肝硬変の感染者にも一部給付が受けられるようになるという。

 同弁護団で奄美群島を担当する末広町法律事務所の鈴木穂人弁護士によると今月、奄美大島に住む肝がん女性が新たに鹿児島地裁に提訴。これで奄美群島での提訴者は16人で、うち10人の和解が成立した。しかし厚労省の算出では、奄美には約400人の感染者がいるとみられ、全面救済には遠く及んでいない。

 鈴木弁護士は奄美での低調の原因を「奄美特有の情報格差」と指摘する。「非正規雇用、低所得の傾向の奄美では健康診断や献血を受ける機会も乏しく、感染を知っても相談する場がわからない」として、「感染者にとって奄美は本土に比べても雇用、医療、司法、行政、情報、あらゆる面で救済から遠いと感じる」と述べた。

 同法律事務所は同訴訟について無料で相談を受け付け、出張相談にも対応。鈴木弁護士自身も医療機関などに、感染者救済の認知拡大を呼びかけている。

 救済の対象者は①1948年~88年の間、7歳になるまでに集団予防接種などを受けたことでB型肝炎に感染した人②該当者の母から母子感染したと考えられる子ども―症状には無症候性キャリアから肝硬変などまで含まれ、最大3千万円までが和解金として支給される。

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