多くの人で賑わいを見せた島野菜マルシェ
生産者・研究者・消費者の違う立場から意見を出し合ったパネルディスカッション
奄美独自の島野菜の保存・継承を目指す「島野菜フォーラム」(奄美食育・食文化プロジェクト主催)が30日、奄美市の奄美文化センターであった。島野菜の直売所(マルシェ)には多くの人が訪れ、基調講演やパネルディスカッションで、島野菜の強みや課題などを意見交換。学術機関などとの協力も視野に、琉球・奄美の伝統食材・食文化の保存に向け、連携していく方針を話し合った。
マルシェにはターマン、シマニンジンなど、三つの団体から持ち寄った島野菜が並んだ。訪れた人々は次々に島野菜を手に取り、店員に調理方法などを質問。友人ら3人と宇検村から訪れたという佐々木一宇さん(71)は「地元の野菜をたくさん買えてうれしい。帰って妻に何を作ってもらおうかな」と満足げに話した。
基調講演は「沖縄・奄美スローフード協会」の田崎聡会長が登壇し、沖縄での農産物直売所の取り組みを紹介。島野菜の“医食農同源”となる地産地消の必要性などを話した。
パネルディスカッションには鹿児島大学農学部の吉田理一郎准教授や地元の生産団体や、教育関係者など8人が出席し、既に栽培されなくなった島野菜や担い手不足の現状について意見交換。桜島大根を主に研究する吉田准教授は、有良集落のアッタドコネに文化的なつながりの可能性を挙げ、「一食材の消滅は一文化の消滅につながる。伝統野菜を絶やさないよう、丁寧に拾い上げる必要がある」と見解を述べた。
また、教育・食育の見地から、島野菜は福祉施設での高齢利用者の残食が少なく、子どもたちにも地元文化を知る機会として有益とする一方、就農者の少なさから①高い②手に入らない③加工に手間がかかる(仕方がわからない)―などの問題点を挙げ、加工・保存の効率化や認知度と需要拡大の必要性を話した。
これらを受け、田崎会長は「奄美食育・食文化プロジェクトの久留ひろみ代表とともに琉球・奄美の在来作物に関する研究を進めたい」と話し、大学などの研究機関と協力して、島野菜の保護・成長に向かう道を模索する方針を示した。