寄主植物除去ばらつき

ミカンコミバエの早期収束・根絶に向けて寄主植物除去の徹底が進められているが、果樹園の中には果実の取り残しや放置も見られる

リスク回避の意識浸透課題
果樹園に放置も 奄美市3地区で取組み計画

 奄美大島でのミカンコミバエ発生に伴う緊急防除により誘殺状況は5週連続でゼロが続いているが、防除の取り組みでは集落ぐるみで進められている寄主植物の除去でばらつきがある。実施されても完全に除去されていない箇所も見られ、冬場に入ってもミカンコミバエの「好適寄主植物」とされるグアバの果実の着果が確認された。早期収束・根絶に向けてリスク回避の意識の浸透があらためて島民に求められている。

 緊急防除による寄主植物の移動規制(島外出荷禁止)の解除に向けて、関係機関がアピールするのは「一斉対策」(捕獲用のトラップや誘殺用のテックス板投入・設置、寄主植物の除去・廃棄)の必要性。2度目が開始されている航空防除を含め前者は行政を中心に進められているが、寄主植物の除去の方は集落をあげた地域ぐるみの取り組みがポイントになり、集落の区長を中心にした住民の関心度合いが鍵を握る。

 「シマミカンやキンカン、グアバなど民家の庭木などとしてかなりの数の寄主植物が存在する」とされる中、奄美大島では昨年末に瀬戸内町や宇検村、今年に入ってからは1月10日に大和村で集落をあげて一斉に寄主植物の除去作業が進められた。2月には奄美市が計画。7日に名瀬地区と住用地区、14日には笠利地区がそれぞれ予定(集落の行事等によっては日程が変更される場合も)している。

 こうした取り組みを行政機関は評価する一方、ばらつきがある点を懸念。「除去作業を行ったにも関わらず、空き家や放任園など寄主植物がそのまま残り、完全に除去されていないところが集落の中にある。地域の連絡網を活用して、所有者を明らかにして協力を求め除去作業を完遂してほしい。グアバやシマミカンなどは果実を取り除いているが、食用にしないなら所有者は思い切って樹自体を切断して処理してもらいたい」(県大島支庁農政普及課)。

 防除効果で「オスの成虫密度は著しく低下している」とされるものの、果実への幼虫寄生の報告が示すように冬場でも産卵可能なメス成虫が潜在する。新たな羽化の誕生を抑制するためにもリスク回避へ「地域をあげて寄主植物を除去し、リスクを減らすという住民運動としての取り組み・盛り上がり」が求められそうだ。

 柑橘=かんきつ=類の果実買上げ廃棄処理はポンカンに続きタンカンが進められ、先月22日現在タンカンは1297・1㌧が処分されている。順調に進んでいるものの、島内の果樹園の中には果実の取り残しや、地面に落ち放置されたままの状態が見られる箇所もある。果実の完熟が進み果皮が柔らかくなるとミカンコミバエが産卵しやすくなることから、関係機関は果実の適正な廃棄(ビニール袋に密閉して可燃ごみとして)を呼び掛けている。

 2月に入り気温が上昇すると土中に生息する蛹=さなぎ=の羽化も警戒しなければならない。羽化するオスの除去に向けて防除作業は正念場を迎えている。

 なお、果実への寄生状況を確認するため県や農林水産省植物防疫所では果実のサンプル調査も進めている。加計呂麻や請、与路島を含む奄美大島全域を対象に、3カ月でそれぞれ一巡するかたちで実施。1回の調査につき2千果(個)を採取し、果実を切開して調査。幼虫の寄生状況のほか、飼育して羽化の確認も行っている。