民有地理由に対策難色

7日夜に落石が発生した奄美市名瀬真名津町「第3エースマンション林」の隣の山(8日午前10時10分撮影)

奄美市や県大島支庁
マンション裏山落石 住民ら避難「困っていること理解して」

 7日午後8時半ごろ、奄美市名瀬真名津町の「第3エースマンション林」の裏山で落石が発生し、同マンションの一部の住民らが親せきや知人宅などに避難した。同所は2010年の奄美豪雨の際、表面に吹き付けていたのり面の一部箇所が崩壊。その後、大雨の際などに落石があり危険性を指摘する住民もいるが、奄美市や県大島支庁は、同所が民有地であることを理由に崖崩れや、落石の防止対策を公費で行うのは難しいとの見解を示している。

 マンションの住民らによると、同所では10年の豪雨の際に山の表面ののり面が崩れ、一部の土砂がマンションと山の間にある駐車場などに流出。その後もたびたび落石が発生しているのを住民が確認している。

 マンション2階で最も山あいに面した部屋に住む藤井久雄さん(80)は「昨夜は息子の家に避難したが様子を確認し戻ってきた。当時(10年の豪雨の後)は恐かった。今は慣れてきてあまり心配しないようになったが、たまに大きな石も上の方から落ちてきて驚く」と話した。

 自主避難を促され、親せき宅に身を寄せている80歳代の女性は「避難を促されて避難したがもう安全なのか、帰ってよいのか、よく分からない」と戸惑っているようだった。

 同マンション管理組合理事の林とく子さんは「豪雨災害で崖崩れが起きた際にも、管理組合で市に対策をお願いしたが、『管理組合の方で(対応)してほしい』といった内容の回答だった。当然、組合にそのような貯えはない。住民が不安を抱え、困っているということを理解してほしい」と訴えた。

 同市土木課は「マンション管理組合との当時のやりとりは今把握していないが、『民間により造られた造成は地主がすること』と当時の担当が判断したのでは」とし、「民間の施工を行政が補助することは税の公平性の観点などからも適切ではなく、利用できる事業もないため容易ではない。ただ現実として今後も崩落する危険があり県ともこれから協議をしたい」とした。

 県大島支庁建設課は「現状、危険なことは間違いないが同地点は人工斜面で公共事業の対象にならない」と説明。同所のマンションなど一帯は12年3月から土砂災害警戒区域に指定されており、そうしたことの住民への広報などソフト面の対策に力を入れたい考え。