住民の協力欠かせず

地域住民の関心・協力が前提となる集落ぐるみでの寄主植物(果実)除去作業

寄主植物除去 取り残しの防止で
蛹から羽化、ベイト剤散布を

 果実、果菜類の害虫・ミカンコミバエの侵入、発生で寄主植物の移動制限(島外出荷禁止)下にある奄美大島では、緊急防除が進められている。行政が主体となる誘殺用のテックス板設置に対し、庭木なども対象の寄主植物(果実)除去は住民協力が前提。奄美大島の市町村では集落ぐるみで寄主植物除去活動が展開されているが、取り組みのばらつきが課題。早期収束・根絶に向けて農林水産省は取り残しを防止するため、あらためて地域住民の関心と協力を呼びかけている。

 侵入が増えた昨年9月以降、奄美大島では合計869匹のミカンコミバエ誘殺が確認さている。ただし12月下旬以降はゼロが続いており、2月2~8日の週もゼロになったことで7週連続誘殺なしとなった。

 要因として関係機関が挙げるのが、冬場に入っての気温低下による活動の鈍化や、防除効果。このうち防除では各市町村が委託料(国が交付、契約は県と)を活用し捕獲用のトラップ調査やテックス板を設置。市町村職員だけでなく若手農家などにも作業を委託して、効率的に満遍なく進めている。また県はヘリコプターによる航空防除を実施。テックス板の投下で、奄美大島では1月27日~2月9日に15万枚(前回より3万枚増)。徳之島でも昨年11月に続き2度目の航空防除が10日から始まり、12日までの3日間で約3万9千枚の投下を予定している。

 同省消費・安全局植物防疫課の島田和彦課長は「テックス板設置や航空防除などは、予算を投入しての取り組み。これに対し寄主果実の除去は地域住民の協力をいただいて活動が進められている。取り残しがないよう除去の徹底が必要だが、庭木や放任園での取り組みも強化しなければならない」と指摘する。グアバのほか、柑橘=かんきつ=類ではシマミカン、キンカンなどの植栽がみられる庭木は個人の所有物であり、行政が無断で果実摘果や樹木を切り倒すことはできない。「所有者の理解・協力が前提。庭木では空き家も対象にしなければならず、不在となっている所有者の情報を集落の区長などが市町村など地元の行政に届けてほしい。放任園の所有者の情報も同様。取り残しを防ぐには地域ぐるみでの対応が欠かせない」(島田課長)。

 集落をあげての寄主植物・果実の除去は、集落の清掃活動の一環として実施。集落の区長を中心に、集落の責任のもと活動が展開されているが、行政側も活動に加わり除去された植物や果実を回収し処分するところもある。奄美大島ではこれまで昨年末の瀬戸内町、宇検村、今年に入り大和村、奄美市(名瀬・住用・笠利の地区ごと)で集落一斉に繰り広げられているが、取り残しが確認されているところも存在することから再度の実施も求められそうだ。

 今後、気温が上昇すると土中にいる蛹=さなぎ=が羽化し、成虫になる。これまでの取り組みで寄生果実(中に幼虫が発生)が見つかっているところは特に注意が必要だ。果実を着けていた樹木の下の土中に蛹がいる可能性があるため。庭木などでの蛹駆除として樹の下にベイト剤(スプレータイプ)を散布する方法がある。ベイト剤散布も市町村が執行する委託料に含まれることから、市町村に連絡すればベイト剤が散布できる。

 土の中で眠った状態の蛹は、成虫や幼虫と異なり生息を確認できない。羽化するオスの除去に向けて蛹の駆除も見過ごすことがないよう、こうした取り組みが必要だ。現在の時期の防除対策の徹底・強化が、春以降のミカンコミバエ誘殺を左右する。「一斉対策」(トラップやテックス板設置、寄主植物の除去・廃棄)による緊急防除は正念場を迎えている中で、行政や生産農家だけでなく地域住民全体での対策が前進するか。危機感と実行が鍵を握ることになる。
(徳島一蔵)