奄美海保・洋上救急慣熟訓練

巡視船かいもんの船上で行われた「2016年度 奄美・古仁屋地区洋上救急慣熟訓練」

特殊環境での救護理解
医療関係者や消防など参加

 奄美海上保安部(佐藤至部長)は15日、同部会議室や名瀬港周辺海域で「2015年度 奄美・古仁屋地区洋上救急慣熟訓練」を行った。医療関係者や消防などが参加し、巡視船かいもんでの傷病者の救護についての現状確認や搬出訓練を実施。船上という特殊環境での救護について理解を深めた。

 同訓練は12年3月以来4年ぶりの実施。佐藤部長は「洋上救急のシステムは1985年に始まった制度。常日頃の医療行為とは違い、騒音や揺れる船内という特殊な環境の中で医療行為を行うという体験を通し、みなさんに知見を深めてもらえたら」とあいさつした。

 洋上救急は海上の傷病者を救う世界唯一のシステムで、全国10か所に日本水難救済会の洋上救急センター地方支部を設置。各地区の海上保安機関などと連携しており、洋上の船舶で傷病者が発生した際、医師による緊急措置が必要な場合には海上保安庁の巡視船やヘリコプターなどで医師を急送。患者を引き受け船内などで加療しながら陸上の病院に搬送している。

 南九州支部のまとめによると、運用開始からの発生件数(14年12月31日現在)は全国で808件、第十管区で102件。第十管区海上保安部鹿児島航空基地のまとめ(2月1日現在)では、15年度の洋上救急は2件だったという。

 今回の訓練には県立大島病院や瀬戸内へき地診療所、大島地区消防組合の職員らが参加し、洋上救急の概要説明を受けた後、実際に巡視船かいもんに乗船し、搬送の流れや治療を行う船内の様子などを確認。通路の狭い船内や治療専用のベッドもなく、揺れる船内での作業となることから、参加者たちも真剣な表情で搬送状況を視察した。