茅葺き家屋の復元作業大詰め

与論民俗村では、茅葺き家屋の復元作業が終盤を迎えている

与論民俗村 来月上旬の完成目指す

 与論民俗村(菊秀史村長)が取り組んでいる茅葺き家屋の復元作業が大詰めを迎えている。先月から基礎工事などを始め、今月10日までに柱など木材の組み上げ作業を終了。17日からは茅葺き作業を始める予定で、来月6日に同町一円で開催される「第25回ヨロンマラソン」までの完成を目指している。

 民俗村には1959年に、隣接する集落から茅葺き屋根の家屋が移築された。2013年に相次いで襲来した大型台風の影響で、同家屋は傾く被害にあったことから、昨年11月に解体作業を開始。継手や仕口の仕組み、屋根下地の構造など過去の与論建築技術を継承するため、写真撮影やスケッチ、作図作業を行いながら約40日間かけ、菊村長ほぼ一人で解体したという。

 「できるだけ当時の住居を復元したい」との思いから、住居に使用されていたカシやユス、イジュなどの木材を沖縄県国頭村から調達。屋根にふく茅はほとんどを島内で刈り入れ、約600束を準備した。

 復元する家屋は3間半角(1間は約180㌢)の母屋。1月に敷石を敷いて基礎工事を終え、今月1日には木材を組み上げ。垂木の上に設置した竹を縄で固定する細かな作業も、13日までに概ね終了した。

 菊村長は「本来ならば約半年間かかる作業を、2カ月で終えるのは大変」と苦笑する。17日からは帰郷する息子などとともに茅葺き作業も始める予定だが、「天候が持ってくれればありがたい。茅も数が足りるか不安もあるので、ふき替え作業と並行して刈り上げ作業も行わないといけない」と悩みは尽きない。

 民俗村に解体した家屋を移築した46年前、幼き菊少年も大勢での作業風景を眺めながら、茅運びを手伝っていたという。「昔の作業を実践できるベテランは、もう島内には残っていない。金具を使わない伝統的軸組工法の素晴らしさを残していかないといけない」と強調する。

 以前は約20人で行っていた茅葺き作業は今回、5人前後で行う計画だ。菊村長は「茅葺き前の状態を見る機会も最近では貴重になっている。見学や作業手伝いなどを通じて、家屋の変化を見てほしい」と呼びかけ、「本土から多くの人が訪れるヨロンマラソンまでに完成させたい」と意気込んだ。