地元市場タンカン取扱大幅減

地元市場でのセリの様子。移動規制によりタンカンの取り扱いは大幅に減少した

青果店経営影響 支援制度の充実求める声

果樹・果菜類の害虫ミカンコミバエの侵入・発生で、緊急防除区域となっている奄美大島(加計呂麻・請・与路島を含む)では、ポンカンに続きタンカンの買上げ・廃棄処分が行われ、全市町村が先月末で受け入れを終了した。特定移動制限区域の設定で寄主植物(作物)の島外出荷は禁じられているが、島内移動は可能。しかしタンカンの地元市場取り扱いは前年に比べ大幅に減少、青果物を販売する専門店の売上げも大きく減っており、流通業界は深刻な影響を受けている。

地元市場の㈱名瀬中央青果(福山治社長)まとめによると、生産農家などの持ち込みによりピーク月の2月のタンカン取扱量は9114・5㌔、売上額(税込)は145万9千円となった。前年度(2015年2月)は17万7873㌔で、今年度は前年度の5%にとどまり、1割にも達していない。前年度の売上額は5779万4千円で、今年度の売上額は前年度の3%しかなく、量が少なくても価格は伸びなかった。

地元市場などで買い付けている青果物専門店は「タンカンは贈答用などとして喜ばれ、島外需要がある人気の商材。この時期に出回る本土産の柑橘=かんきつ=類と比べてもタンカンの方が美味しい。それだけに人気の商材を島外に出せないのは大きな痛手。島内消費だけでは需要が限られており、2~3月にタンカンを扱えないことで売上げは例年の半分以下まで落ち込んでいる」と語る。

島内消費が伸びない背景には、「ミカンコミバエの寄主植物=すべての果実の中に幼虫が寄生している」という誤った認識があり、消費者の買い控えもあるという。

売上げの落ち込みは経営に直結する。「人件費などの固定経費は売上げが減っても掛かる。大幅な売上げ減で固定費の経営への圧迫から、雇用している従業員にやめてもらった青果店も出ている」(専門店代表)。今回の移動規制で流通業界では売上げ減により雇用問題(従業員削減)、資金繰り悪化など経営への影響が表面化している。

タンカンなど青果物を扱う流通業者への対策として行政側は、緊急経営対策資金や中小企業振興資金など融資支援を打ち出している。これに対し中央青果の福山社長は奄美市議会の特別委員会の場で「現在示されている融資制度は、ミカンコミバエ問題発生以前からあるもので、金融支援とは異なる。今回の問題発生には国や県にも大きな責任があることから、流通業者の損失影響に関する支援では、国や県は新たな金融支援の枠組みを提示してほしい」と訴えた。これを受けて市議会もミカンコミバエ問題に特化した県独自の金融支援を求める要望書を県に提出している。

専門店からは「生果でも食することができるスモモも島外の需要があり、人気がある。スモモは島外に出荷できることを願っており、移動規制が長期化すれば経営が立ち行かなくなる」として、経営への支援について「融資も借入れであり、利用は新たな借金をするということ。返済金の分割化や期間の長期化など利用しやすい支援制度にして、民間事業者が経営危機を乗り越え存続できるようにしてもらいたい」との声も出ている。