天城町教委・鹿児島女子大 「下原洞穴遺跡」初調査

天城町教委・鹿児島女子大 「下原洞穴遺跡」初調査

先史時代(縄文時代晩期末)の埋葬骨とみられる人骨資料と竹中正巳教授=14日、天城町西阿木名

下原洞穴遺跡全景
天城町西阿木名「下原洞穴遺跡」全景(円内はブダイ下顎を研磨した装飾品)

先史時代 埋葬骨2体検出
爪形文土器、装飾品も伴出

 【徳之島】天城町教育委員会と鹿児島女子短期大学は14日、共同発掘調査中の同町西阿木名「下原=しもばる=洞穴遺跡」の中間成果を発表。先史時代(縄文時代晩期末=約2500年前)の爪形文土器や貝装飾品を伴い、1次葬骨とみられる2体を検出。生活や葬制解明への資料とともに、旧石器時代の手掛かりにも期待を寄せている。

 同遺跡は、同集落の県道から西(海岸)方向に約1㌔の小字名「加万答=かまんとう=」の琉球石灰岩層にある洞穴。「崖葬墓」的な聖地の1つだが、戦中は防空壕にも使われたという。2010年5月、同町教委の具志堅亮学芸員(32)が沖縄県立博物館関係者との文化財分布調査の際、表面採取した遺物などから重要遺跡としての価値を見出していた。

 初の第1次発掘調査は、先史時代の埋葬骨など人骨の発見と、表面採取した爪形文土器(徳之島最古の土器タイプ)の生活層の確認などを目的に今月4日から18日までの予定で行われている。形質人類学など専門家の竹中正巳鹿児島女子短大教授(51)=歯学博士=らと共同調査している。

 具志堅学芸員と竹中教授によると、地表から浅い地点でまとまった形の1次葬骨2体(男女)が並んで検出された。先史時代の土器(仲原式土器=縄文晩期)や、ブダイの下顎=あご=を研磨して孔=あな=を開けた装飾品も出土。徳之島での先史時代の人骨検出例は、伊仙町の面縄第1貝塚、佐弁トマチン、喜念クバンシャ遺跡に次いで4例目。ブダイの装飾品の類例は「下山田Ⅱ遺跡」(奄美市笠利町)であるが、人骨に伴っての出土例は「今回初」とも。

 面縄第1貝塚と同様に、多くの爪形文土器が、それに後続する土器とともに出土したことに「爪形文土器の時期の明確な生活層が遺跡一体に存在していることが予想される」。その下層からは同島初出土の波状沈線・山形口縁を呈した土器も1例。さらに最下層(第5層)からはより古い面縄西洞式土器(縄文時代後期=約3000年前)も出土したことに、「もっと古い旧石器時代相当の検出が期待される」(竹中教授)という。

 19日午後2時からは一般対象の現場説明会を行う。希望者は午後1時半まで西阿木名集落県道沿い(誘導員待機)に集合。問い合わせは天城町ユイの館(℡0997―85―4720)。