徳之島ダム 阿権で一部通水開始

事実上の一部通水を開始した徳之島ダム

徳之島ダム実質通水開始
カボチャ早生品種のトンネル栽培(チューブかん水)に威力を発揮=11日、伊仙町阿権

「理想的農業が可能に」
トンネル栽培に威力

 【徳之島】1997年度に事業着手した国営かんがい排水事業徳之島用水地区の「徳之島ダム」(貯水量730万㌧)は、昨年5月からのパイプライン(総延長128㌔)の通水試験が順調に進展。同試験と併せて今月、伊仙町「木之香阿権地区」の散水モデルほ場を皮切りに事実上の一部通水が始まった。トンネル栽培カボチャへのチューブかん水で威力を発揮している。

 同国営事業は徳之島3町の全耕地の約半分にあたる3500㌶を対象に畑地かんがい営農を推進し、収益性の高い農業を実現するのが目的。徳之島ダム関連を含めた総事業費は約590億円。九州農政局徳之島用水農業水利事業所によると、2015年度末の進捗率は約96%(事業費ベース)。16年度に事業完了予定だが、ダム小水力発電機器(発注・製作中)の据え付け工事のみは17年度持ち越しの見通し。

 事実上の末端かんがい排水の通水開始地区となった木之香地区などは、同国営事業による暫定畑かんモデル(河川水利用)ともなってきた。県営畑総事業(担い手支援型・一般)木之香阿権地区における「阿権地区散水モデルほ場」の整備で今回、待望の「徳之島ダム用水」活用の先駆けとなった。

 同モデル受益地区でトンネルビニール展張にかん水チューブを巡らせ、カボチャの早生品種(4月どり)に取り組んでいるのは同町阿権の太田淳一さん(51)と平信吾さん(51)の2人。11日は同町議会議員と大久保明町長ら執行部一行も現地視察した。

 県徳之島事務所の農村整備課や農業普及課の担当者は説明で、「徳之島ダムの水を利用して付加価値の高い農業が実証されると思う」と期待。太田さんは「500㍑のタンクを積んで地下水ポンプ給水所に通い行列をつくっていたが、今では給水栓のバルブをひねるだけで水が出ることに感謝。高単価の4月出荷を目指したい」。平さんも「待ち望んでいた。バルブをひねるだけで思う存分水が使え、理想的な農業ができる」と目を輝かせていた。