松夫佐江さん創作童話上梓

創作童話『美しいアマン島』を上梓した松夫佐江さん

クロウサギ通し生き方ヒントに
教育機関や家庭での読み聞かせ期待

 奄美市名瀬地区の公立保育所に33年間勤務し、長年幼児教育に携わった松夫佐江さん(89)=奄美市名瀬朝仁新町=が、創作童話を上梓した。タイトルは『美しいアマン島』。命の絆を大切に守りながら生きるアマン島のクロウサギを通して「苦難の時代でも、みんなで助け合う生き方のヒントになれば」と松さんは願っている。

 伊仙町阿権出身の松さん。同集落のシマ言葉(シマグチ)をベースに作品を著すなど昔から伝わるシマ言葉や遊び、民話などを後世に残す伝承活動に取り組んでいる。創作童話の出版は「保育所や幼稚園などの教育機関や家庭での読み聞かせで役立ててほしい」との意図から。物語の挿絵を、かつしか工房の大原勝美さんが担当。松さんは後記で「ユーモアあふれる楽しい挿絵」と紹介している。

 物語の主人公はクロウサギのクロスケ。生まれたばかりの赤ん坊で、お母さんによる子育てでは巣穴の中で大きくなるまで育てることに注目。悪者にさらわれたり、食べられたり、ケガなどしないように「大切な宝物のわが子を、しっかりと守り育てるため」と説明、母親の深い愛情を伝えている。

 クロウサギの生き方では、こんな記述も。「アマン島の自然の恵みをもらい、親たちは子や孫を一生懸命育て、命の絆を大切に守り、生きています」。共に生きる対象はクロウサギだけではない。物語ではイシカワガエルやケナガネズミ、ルリカケス、アカヒゲなどの生き物もそれぞれの特徴を表現して登場する。こうした仲間たちに、たくましく成長したクロスケは相談する。「おばあさんが眠っているシイの木の前の広場で、たくさん実をつけてくれる秋にまつりを開いてシイの木に感謝し、みんなで祝ってあげよう」。

 仲間たちは賛成する。物語の最後では野鳥たちが合唱、イシカワガエルは輪唱、ケナガネズミは長いしっぽで指揮、クロスケたちはピョンピョン飛び跳ね楽しく踊る―といった様子を描いている。仲間たちが個性を発揮することで多彩さに結びついていく。

 松さんは「この物語によって命の大切さ、子育ての大事さ、仲間同士の助け合いなどを感じてもらえたら。特に家庭で親と子、祖父母と孫の関係で一緒に読んでほしい。家族みんなで読み、楽しみながら昔話をしたり、シマ言葉で話すきっかけになればうれしい。挿絵があるだけに幼児期でも子どもたちが興味をもってくれるのではないか」と語り、「これからも出来る限り何かを書いて後世に残していきたい」と新たな創作活動にも意欲をみせた。

 松さんの著書の頒価は1620円(税込)。問い合わせ先は、かつしか工房℡0997・69・3739まで。