西康範さんが撮影した宇検村赤土山の新緑
左後方には奄美最高峰の湯湾岳
4月に入り、照葉樹林の新緑に彩られた奄美大島の森は鮮やかさがいっそう増し、森全体に広がっている。奄美市名瀬の西康範さんが宇検村赤土山の展望所からの眺望を撮影。写真画面左後方には奄美最高峰・湯湾岳(標高694㍍)も見える。
新緑の頃、萌黄色に照り輝く照葉樹の森の代表的な樹種はブナ科シイ属のスダジイ(イタジイ、オキナワジイ)。温帯から亜熱帯まで分布するが、奄美大島以南に生育するのが亜種(琉球列島固有)のオキナワジイだ。『琉球弧・野山の花』(南方新社刊)では、「本亜種は琉球地方に産するスダジイの地理的亜種」と紹介している。
奄美、沖縄の南西諸島の森林植生では、基本となる樹木がブナ科やクスノキ科の常緑樹だ。この照葉樹林は本土の西日本側でも基本となる樹木のため、森の植生でみると、南西諸島を亜熱帯に位置付けることに疑問を呈する見方もある。
年間を通して常緑の森も新緑の頃は装いが異なる。若葉が萌える様子は「まるで巨大なブロッコリーのよう」とも形容される。まもなく学校では新入生を迎えての入学式が行われるが、樹木の芽吹きにより自然界は一足早く新風が吹き込まれているようだ。異動での奄美への赴任の機会をとらえて直接森に足を運ぶと、新緑に染まることができる。