ミカンコミバエ 4月中旬から「危険期間」へ

着果し始めているスモモ。収穫期までミカンコミバエの誘殺ゼロが続けば規制が掛からず島外出荷が可能になる

誘殺15週連続ゼロ 気温上昇、世代交代警戒

 農林水産省植物防疫所は6日、奄美群島におけるミカンコミバエの誘殺状況(4月4日現在)を発表した。最新週の3月29~4月4日までの誘殺件数は緊急防除区域内外ともにゼロ、緊急防除区域の奄美大島(加計呂麻・請・与路島を含む)の誘殺ゼロは15週連続。4月に入り最高気温が20度を超える日が続くなど気温上昇により世代交代で新たな成虫の発生・活動の可能性があり、今月中旬から「危険期間」に入る。警戒が一段と必要だ。

 緊急防除区域の奄美大島の誘殺は、昨年12月15~21日の週に2匹(宇検村と瀬戸内町で1匹ずつ)確認されて以降ゼロが続いている。喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島の緊急防除区域以外は12月1~7日の週から18週連続の誘殺ゼロ。2月23~29日の週に1匹の誘殺(伊平屋島で)が確認された沖縄県も5週連続で誘殺ゼロだった。

 ポンカン・タンカンの柑橘=かんきつ=類に続き、移動制限基準日を迎えたのが特産果樹のスモモ。5月に収穫期に入るが、その期間から遡り、基準日(2月22日)までの一世代相当期間にミカンコミバエが見つからない誘殺ゼロ(対象はオス成虫)が続けばメス成虫の活動もないと判断され、スモモは規制が掛からず島外出荷が可能になる。

 スモモは特に大和村で栽培が盛ん。栽培面積約20㌶、生産農家約150人。今期のスモモは1月の寒波の影響などで例年に比べ10日~2週間程度開花が遅れた。通常、開花後、約90~100日で成実し、5月下旬頃から果実の収穫期に入る。

 開花の遅れは着果時期に影響しているが、4月に入り、樹園地では大人の親指大ほどに生育した青い果実を見ることができる。今後大玉化に向けて摘果などの作業が必要になる。村果樹振興会(勝三千也会長)は昨年取得したK―GAP(かごしまの農林水産物認証)の更新を行政の指導のもと進めており、今後申請に基づき県による書類・現地確認などを控える。勝会長は「今月末まで誘殺ゼロが続けば島外出荷が可能になるのではないか。これまでの防除作業が実を結ぶことを願いたい」と語った。

 スモモはミカンコミバエが好む「好適寄主植物」。そのため「成虫が付きやすい」とされ、現在着果している果実が熟していくと成虫が寄生する可能性がある。グアバなど果実への幼虫の寄生は年末だけでなく年明け後も確認された。ミカンコミバエは産卵により幼虫発生後、蛹=さなぎ=は土中に生息し、土中からの羽化で新たな世代である成虫が誕生する。同省消費・安全局植物防疫課は「年末に産卵したものが羽化する時期は、4月中旬くらいとみられる」としており、今後成虫が発生し活動することも予想される。

 国・県・市町村の関係機関は地域住民の協力のもとテックス板設置、寄生する可能性がある寄主植物の調査と除去などの防除活動を計画的に進めている中、発生・活動を防ぐ対策が一段と求められそうだ。

 同課の島田和彦課長は「ミカンコミバエの世代交代の可能性から、4月中旬~5月中下旬までは危険的な期間でいっそう警戒しなければならない。成虫の寄生に備えて新たに熟する果実(ゲッキツやヤマモモ等)を摘果し、成虫の寄生や産卵を防ぐ取り組みを進めてもらいたい」と指摘。またグアバも引き続き果実への寄生対策が必要として、蛹が羽化した場合に成虫が寄生しやすい樹下部の果実の除去を呼びかけている。

 寄主植物の取り残しへの警戒も必要。除去の徹底は地域住民の関心が左右することから、早期根絶に向けた機運の高まりが引き続き欠かせない状況にある。
(徳島一蔵)

農商工経営対策で新制度
2年間、利子全額補助 ミカンコミバエ問題で奄美市

 奄美市は新年度から新たに制度資金などの借り入れに対する利子補助制度を創設した。制度資金等の借り入れを行った「農商工」事業者に対し、融資額1千万円を限度に2年間、利子の全額を補助する。ミカンコミバエ問題による市の経済への影響軽減を目的としているが、幅広い業種の中小事業者を対象としており、今後、広報を強化し、制度活用を呼びかけていく方針。

 事業名は、「奄美市経営対策資金利子補助事業」。市内事業者の経営の安定と育成を図るため、市単独事業として新年度当初予算に1千万円を盛り込んだ。

 2015年11月13日から18年3月31日までに借り入れた①県融資制度(中小企業振興資金、緊急経営対策資金、セーフティネット対応資金)②(独)奄美群島振興開発基金の融資(水産業振興資金は除く)③㈱日本政策金融公庫のマル経資金―の制度融資にかかる利子が補助対象。

 融資申込み先は①が鹿児島銀行大島支店、南日本銀行大島支店、奄美大島信用金庫本支店、奄美信用組合本支店。②奄美群島振興開発基金③奄美大島商工会議所、あまみ商工会。

 補助対象となるのは農業、製造業、運輸業、卸小売業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業を主に営む中小事業者で、奄美市内に主たる事業所を有する法人、または個人(個人は市内に住所がある人)。市税滞納がないことなどが要件。

 市議会のミカンコミバエ問題に関する特別委などで、卸小売業界等の窮状を訴えていた、名瀬青果食品協同組合の平井雅人理事長は「タンカンを扱うシーズンの収入などを見込んで、借り入れの返済計画などを立てていた事業者にとっては特にありがたい制度と思う。店(事業者)側は借りやすく、銀行側も貸しやすくなるのではないか。ただミカンコミバエの問題が長期化し、スモモやパッションフルーツにも影響が出てくると状況は悪化していく」とし、今後の状況を見極め、その時々での適切な対応にも期待を込めた。

 奄美市商水情報課によると、ミカンコミバエによる直接的な影響に加え、消費の落ち込みなど間接的な影響なども考慮し、今回の制度の補助対象を幅広い業種に設定。同課は「補助金を受けるには、補助要件に該当するかどうか、市の認定を受ける必要があり、詳細に関しては問い合わせてほしい」と呼びかけている。

 制度に関する問い合わせは奄美市商水情報課商工振興係(℡0997―52―1111内線1421)。
(牧一郎)