奄美で描くユニバーサルデザイン

「奄美の魅力と観光ユニバーサルデザイン」について意見を交わしたパネルディスカッション

160409デンマーク国際交流シンポジウム2
デンマークから来島したオーレ・ラウツ校長

障がい者の意見聞き取り入れを
福祉の先進地デンマークから来島、講演や討論

 デンマーク国際交流シンポジウムinAMAMI「奄美で描くユニバーサルデザイン―福祉環境と観光と―」(エグモント奄美受入実行委員会主催)が9日、奄美市名瀬の奄美観光ホテルであった。福祉の先進地であるデンマークの福祉環境や人づくりに関する講演や、観光ユニバーサルデザインをテーマにしたパネルディスカッションを実施。奄美の現状と、目指す福祉環境の在り方について、意見を交わした。

 同シンポジウムはデンマークのエグモント・ホイスコーレンから学生たちが修学旅行で来島するのをきっかけに開催。基調講演では、オーレ・ラウツ校長が、障がいのある人と共に学ぶ同校の取り組みや、デンマークにおける福祉と環境について、奄美パークの宮崎緑園長が自然や文化、人など奄美の魅力について語った。

 講演でラウツ校長は、同校が、脳性まひだった自身の父親が「障がい者のための国民高等学校を作る」として、60年前に創立された学校だったと説明。自身が校長に就任してからも、障がい者も使いやすいプールとは何かなど研究を重ね、現在の仕組みが出来ていることなどを紹介した。

 パネルディスカッションでは、ラウツ校長や宮崎園長に加え、高野洋志さん(NPO法人セイラビリティ奄美理事長)、向井扶美さん(社会福祉法人三環舎理事長)、片岡豊さん(エグモント・ホイスコーレンシニア教員DSSA代表)が参加。田中直人さん(島根大学大学院特任教授、奄美観光大使)をコーディネーターに「奄美の魅力と観光ユニバーサルデザイン」について意見を交わした。

 ラウツ校長や片岡さんはデンマークのボランティアについて、「福祉はいくら行政が整備してもこぼれる部分がある。それを支えるのがボランティアだが、心や時間に余裕がないとボランティアは難しい。でも、それが出来ているのがデンマーク」と説明。同校が▽相手を尊重する尊厳性▽自立心▽連帯感―という3点の価値観に基づいて人づくりと教育を進める中で、「それでも一人一人に理解してもらうのは時間がかかるもの。人にはそれぞれの能力があり、全員が同じように物事を進めることはできない。だが、やりたいことをやる権利はある」と指摘した。

 また、バリアフリーについても「知識のある専門家だけで作るのではなく、障がい者の意見を聞くこと、意見を取り入れることが大切。時間はかかるが、忍耐も大事」などとアドバイスした。

 何度もデンマークを訪れている田中さんは、「デンマークでは、身体状況に関わらず、すべての人が生活を楽しむ権利が与えられている」とし、「宿泊施設など、基本的なバリアフリーが奄美はまだできていない。基本的なところを見直すことで、もっと魅力的な島になるのでは」とした。

 奄美でバリアフリーウォッチングなどを開催していたこともある向井さんは「奄美には車いすで動けるホテルがほとんどないというのが、今回の受け入れでも実感した。現状を変えるためには、市民が一緒になって地域を点検するということを、継続していかなければならない」などと訴えた。

 パネルディスカッションのあとには、学生たちも交えた交流会も行われた。