「絵描きって自分の体の土壌に特殊な植物が咲いて収穫できるような、集中力のいる仕事なんですよ」と、激しい仕事の状況とはうってかわって物静かに話す藤山ハンさん=新宿区新宿の「ギャラリー絵夢」にて
諸鈍シバヤで使用されるお面の一つに魅入られて描いた「奄美の古面と海棲景」
【東京】新宿区新宿の「ギャラリー絵夢」で、15日から小さな回顧展と題する藤山ハンさん(75)の個展が12年ぶりに開かれている。藤山さんは両親が奄美の龍郷町嘉渡出身で、本人は鹿児島生まれ。
今回の個展は、足利市立美術館で開催されている「画家の詩、詩人の絵~絵は詩のごとく、詩は絵のごとくにに因んで」とサブタイトルに謳われているように、同美術館に藤山さんも「雷に打たれし裸木」の絵と「飢餓画家」と題した詩が所蔵されていることから、同美術館の学芸員の一人に勧められて開いたもの。
「これが、最後になるかもしれないなあと思って『ちいさな回顧展』をいれたんですよ」と、藤山さん。
作品は今回、新旧含めて39点。今年に入って作成した三点は奄美のお面やケンムン、立神を描いていて、藤山さんの特にお気に入りは「奄美の古面と海棲景」。
この作品の古面はかつて足利市立美術館で「アジア・アフリカ・オセアニア、仮面・弧面」が開催されたときに、奄美の諸鈍シバヤで使用される7面の仮面も並び、18から19世紀に作られたという、ナタで彫ったような荒削りの木彫りの激しいお面を見ただけでも、心がざわざわした。「体に流れる奄美の血が描かせた作品ですよ」と微笑んだ。
21歳で絵描きになると覚悟して絵描きになった藤山さん。「描けば描くほど売れない絵描きだよー」と笑わせる。色彩は決して明るくはないが、奄美の持つ心の原風景を静かに深くかもし出す作品群となっている。「ぜひ、ご鑑賞を」。
個展は新宿区新宿3―33―10新宿モリエールビル3階「ギャラリー絵夢」(大塚家具近く)で24日まで午前11時から午後7時まで。(最終日は5時まで)会期中、藤山さんは横浜から全日会場に在廊予定。