今後も防除積み重ねを

特定移動制限区域以外」拡大

申請・検査で島外出荷「一つの区切り」

 果樹類の害虫ミカンコミバエ種群の発生が奄美大島で確認され、植物防疫法に基づく緊急防除による規制対象品目の移動規制(島外出荷禁止)が昨年12月13日から実施されて4カ月余り。今月18日現在で誘殺ゼロは17週連続となっている中、移動規制は一つの区切りを迎えた。申請・植物防疫所による検査といった手続きを踏まえれば、これから収穫を迎えるスモモなどの島外出荷が可能になる。しかし気温上昇に伴い依然として警戒が必要で、最終目標の規制解除に向けては今後も防除の積み重ねが欠かせない。

 緊急防除の実施により奄美大島(加計呂麻・請・与路島含む)は、奄美市の笠利地域を除き「特定移動制限区域」となった。防除区域のうちミカンコミバエが付着、または付着しているおそれがある移動制限植物が存在する可能性が特に高い区域だ。

 これにより移動制限基準日が、柑橘=かんきつ=類のうちポンカン(2015年9月26日)・タンカン(同10月8日)、スモモ(16年2月22日)、マンゴー(同6月14日)が品目ごとに設けられた。この基準日以降にミカンコミバエの誘殺が確認されたトラップを中心として半径5㌔以内の区域が「特定移動制限区域」となり、誘殺の状況(昨年12月15~21日の週に宇検村と瀬戸内町で1匹ずつ確認が現在のところ最後)から、この区域内で生産されたポンカンやタンカンは原則として全量廃棄の対象となった。

 この誘殺の確認や産卵状況から、幼虫が蛹=さなぎ=となり、羽化成虫の新たな世代の誕生は「4月中旬くらい」とみられていた。この期間を過ぎ、誘殺ゼロが一・二世代相当期間続いていることから、農林水産省は「特定移動制限区域以外」を笠利地域だけでなく、奄美大島全域(加計呂麻・請・与路島含む)に拡大。笠利地域同様、生産者などの申請により植物防疫所の移動検査を受け、合格すれば島外に移動できる。ただし収穫後も保管されているという情報があるタンカンなどの柑橘類は、島外移動の対象にはならない。

 誘殺ゼロ(対象はオス成虫だが、メス成虫の活動もないと判断)が7月の上中旬あたりまで続けば「三世代相当期間誘殺ゼロ」と判断されて、奄美大島の防除区域は解除され全ての規制対象品目が島外出荷できる。
 県大島支庁農林水産部の東洋行部長は「特定移動制限区域以外の拡大は、解除に向けた途中段階で一つの区切りと言える。最終目標を早期に達成するためにも現在進めている防除対策を今後も積み重ねていくことが必要」と指摘する。防除対策として進められているのが、①県による奄美大島全域での航空防除(誘殺用のテックス板投下)②地上でのテックス板設置③果実調査(ミカンコミバエが寄生する可能性がある寄主植物の調査と除去)―で、こうした取り組みも①は次回も検討②は1カ月~1カ月半の間隔でテックス板の交換③は定期的な実施―により継続していく。

 東部長は「関係機関、地域住民協力による計画的な防除の取り組みでミカンコミバエの生息密度はかなり下がっている。しかし蛹から羽化の可能性があるだけに対策を継続し、テックス板による誘殺でオスの生息をゼロにして早期根絶を図っていきたい」と語った。

 なお、トマトなどの青果物を店頭などで消費者が購入し、それを島外に持ち出すことはこれまで通り規制が掛かりできない。5月21日にはスモモの収穫基準日を迎えるが、農水省によると、JAの共販で島外に出荷する場合は誘殺ゼロが続けば、書面上のチェックなどで移動が可能。島内で誘殺が確認されると、特定移動制限区域以外であっても梱包などの確認が必要になる。

 今月27日以降、奄美大島全域が特定移動制限区域以外になるものの、気温の上昇によりミカンコミバエが世代交代しやすい「危険期間」には変わりはない。引き続き緊張感を持って現在熟している果実(ゲッキツやヤマモモ等)の摘果など寄生を未然に防ぐ取り組みが住民一人一人に求められている。
 (徳島一蔵)

移動で注意点説明

160421島外移動検査住民説明会 (2)

大和村を皮切りに始まった「島外移動検査に関わる住民説明会」=大和浜公民館=

島外出荷向け大和村皮切りに説明会

門司植防名瀬支所

 ミカンコミバエ種群の緊急防除における島外向け移動検査に関わる住民説明会(門司植物防疫所名瀬支所主催)が21日、大和村を皮切りにスタートした。同村大和浜公民館の会場には農家や自宅の庭でスモモを育てている人など、地域住民約30人が来場。申請から島外出荷までの流れや申請の方法、販売上の注意などについて説明があった。

 緊急防除区域の奄美大島(加計呂麻・請・与路島含む)は現在、一部地域を除いてミカンコミバエ種群の寄生種の島外移動を禁止する移動制限区域がかけられている。3月下旬から徐々に解除が進んでおり、今月27日には奄美大島全域の移動制限区域が解除されることから、同支所ではスモモの出荷時期を間近に控えた同村を皮切りに、奄美大島5市町村それぞれで島外移動に向けた説明会を開催。初日には同村の各公民館など10か所で行われた。

 冒頭で植防の中川智秀所長は「このまま順調に推移していけば、緊急防除が必ず達成できると期待している。これからも法的な規制は続くけれど、その中でも、果実の移動が出来るということを円滑に進められるようみなさんに説明したい」とあいさつ。同所担当者や役場担当職員らが▽申請~島外出荷までの流れ▽申請書の記入▽ラベルの貼付▽移動検査を受検したものを販売する上での注意―などについて説明した。

 島外移動のためには、生産者らが植物防疫所に移動検査を申請し、ほ場位置や梱包を確認、合格証明書が発行されたほ場で生産されたもののみ、島外へ出荷することが可能。移動検査を受検したものを販売する際も、①開梱・開封する場所は特定移動制限区域以外②詰め替えや小分けは行わない③開封したものはしっかりと梱包しなおして、社判をラベルの上に押印する―などの作業が必要となる。

 参加者からの質問では「観光客などが購入して、その場で食べたものの残りを持ち帰ることは出来るのか」などもあり、同所担当者からは「どこで生産されたものかはっきりとわかることが必要。ラベルのないものは、持ち出すことはできない」などと答えた。

 大和村では5月9日と16日に移動検査を予定している。島外移動を予定している住民に対して「ラベル作成の時間もあるので、なるべく早く申請してほしい」などと呼びかけた。

 22日は龍郷町の秋名コミュニティーセンター(午前10時~)と、浦生活館(午後2時~)で住民説明会を開催。説明会に関する問い合わせは門司植防名瀬支所電話0997‐52‐0459まで。