奄美群島付近で発生した地震事例「地震調査委員会ホームページより」
熊本地震の震源域とされる布田川断層帯に対し、活動時マグニチュードの高い地震発生を予見した「地震調査研究推進本部地震調査委員会」(事務局 文部科学省研究開発局地震・防災研究課)は、奄美群島で「海溝型地震」の発生リスクを指摘する。南西諸島海溝の近くで起こる大地震に伴う津波被害に警鐘を鳴らしている。
国の関係省庁や大学機関で構成される同委員会は、全国の主要活断層、海溝型地震の調査研究のため設立。地盤状態、活断層の現状活動などから発生する地震規模を評価(推計)している。
今回、布田川断層帯付近での地震発生について、同委員会はこれまでマグニチュード(以下M)7程度、30年以内の地震発生確率を0~0・9%(やや高い)と評価。さらに同断層帯を含む、九州中部でM6・8以上の地震発生を18~27%と評価していた。
奄美群島の活断層については、奄美大島を除く喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の一部分で短い活断層の存在を指摘。事務局の同課は、地震発生の可能性がある活断層を「表層を20㌔以上」と定義しており、群島内に関して「奄美群島の地盤は比較的強く、(活断層が)地震発生の要因となる可能性は低い」との考えを示した。
その一方、喜界島沖の南西諸島海溝付近を震源とする、1911(明治44)年6月15日に発生した「奄美大島近海地震」は九州・沖縄地方での最大規模の地震(M8・0)とし、奄美大島と喜界島で震度6相当、沖縄でも同5相当の揺れを推定。この地震で、奄美と沖縄では死者12人、家屋全壊422棟の被害が出たことから、同委員会は、大地震の発生とそれに伴う津波被害の可能性を示唆している。
今後の地震発生について、同課担当は「活断層で起きる地震は、発生間隔が数千年と長いため、奄美での30年間の地震発生確率値は未知数」とした上で、過去に起きた巨大地震の事例から「耐震補強や家具の固定など、日頃から防災対策を講じておくことが重要」と呼びかけ
ている。