「被災者の笑顔が一番うれしい」

即応予備自衛官として熊本地震の被災地支援に派遣され「賞詞」を受けた時博幸さん(徳之島町)
益城町の避難所で体操指導を行う派遣隊員たち(時さん提供)

熊本地震・被災者支援 即応予備自衛官の時さん(徳之島町)
誠心誠意貢献認められ表彰

 【徳之島】熊本地震の被災地支援で防衛省が招集、派遣した自衛隊OB「即応予備自衛官」の1人、徳之島病院作業療法士の時博幸さん(36)=徳之島町亀津=が10日間の任務を終え5日に帰島。益城町=ましきまち=の避難所などでの高齢者や障がい者への入浴支援、エコノミークラス症候群防止の体操指導など誠心誠意の貢献が認められ、第24普通科連隊長「賞詞」(表彰)に輝いた。

 民間企業などに勤める元自衛官「即応予備自衛官」の災害招集は、東日本大震災に続いて2回目。防衛大臣が全国から300人を招集、先月25日―今月5日まで派遣した。今回は初の医療支援隊も含まれ、時さんはただ一人の作業療法士。第24普通科連隊の衛生支援小隊員として益城中央小や安西小の避難所で任務に当たった。

 現地入り直後の感想は「住宅やブロック塀などが倒壊し、非現実的な映画の世界のようで言葉を失った。作業療法士として何ができるのか」と自問。「実際にはやることが多すぎて自身の許容範囲を超え、目の前のことに対処するのが精一杯だった」と述懐する。

 避難所では「楽しい音楽を流すことで高齢者たちも楽しく体を動かしてくれる体操、被災者たちの落ち込んだ気持ちのリフレッシュに努めた」。そして、最も印象的だったことは、半身不随の障がいのある高齢男性は長期の避難生活で下肢の血行不良を起こすなど極限状態にあった中、看護師など他の派遣スタッフとともに10日ぶりの入浴を支援したこと。「賞詞」は全国から招集・派遣された300人中15人だけの抜てきだが、「入浴でお年寄りの笑顔が見られたのが一番うれしい」。

 車中泊などのエコノミークラス症候群対策も、JMATなど災害医療チームの専門家らの現地説明会は多いが、「実際的には被災の精神的ダメージで落ち込んでいる。大事なことは、まずメンタル面を高揚させのための体操など雰囲気づくりも大事と感じた」と強調する。

 時さんは6年間自衛官を務め退職後、4年間かけて作業療法士の国家資格を取得。2011年10月から公益財団法人・社会福祉法人慈愛会「徳之島病院」(同町亀津)に勤務。職場の理解と支援で今年3月、「即応予備自衛官」に志願したばかり。